株式投資 書評

長期投資のバイブル『ジム・クレイマーのローリスク株式必勝講座』

2015/07/20


ジム・クレイマーの“ローリスク"株式必勝講座

【本の概要と感想】

ジム・クレイマーは元ヘッジファンドマネージャーで、現在はアメリカで人気の投資番組「マッドマネー」の司会を務める人です。

表紙の絵とタイトルだけを見ると、なんとなく中身がない本のように見えます。

しかし実際には、長期投資の初心者~中級者ぐらいの方が投資の基本を学ぶのに必読の書だと感じました。

特に、
第2章:「トップダウン」アプローチの手引き
第3章:スーパー・グロース銘柄の評価
第4章:社会と経済の7つのメガ・トレンド
第7章:いつ売ればいいのか
の4章は必読です。

第2章では、「世界経済見通し→セクター成長率の見通し→個別銘柄の評価」という順番で、投資対象を選定する方法が書かれています。経済が成長している局面では「循環株」を中心に、経済が低迷している局面では「成長株」を中心にポートフォリオを組むことで、インデックス(日本ならTOPIX)を上回るパフォーマンスを目指します。

第3章では、社会の長期トレンドに乗って今後も高い成長率を維持することができる企業を評価する手法が学べます。10個の評価指標に基づいて、スーパー・グロース銘柄を評価します。

第4章では、社会の大きな7つのトレンドが紹介されています。このメガトレンドに乗った銘柄は、景気後退局面では株価の下支え要因となり、逆にそのテーマがブームになった時には株価が急騰する可能性もあります。

そして第7章では、多くの投資家にとって一番難しい「売るタイミング」について、ジム・クレイマーのルールが書かれています。

社会の大きなトレンドや銘柄選定方法、そして売るタイミングまで、ジムクレイマーの投資の考え方が網羅的に書かれている良書です。

以下に、『ジム・クレイマーのローリスク株式必勝講座』の抜粋をまとめました。全510ページもある本なので要約も長くなってしまいましたが、目を通しておいて損はない本だと思います。

Amazonの内容紹介
ウォールストリートに35年身をおき、巨万の富を築いた凄腕ヘッジファンド・マネジャー。同時に米国の人気テレビ司会者でもあるジム・クレイマー。
本書は、投資指南の教祖として世界的にも著名なジム・クレイマーの最新刊であり、投資初心者~中級者を対象にした、リスク回避=必勝法が中心テーマとなっています。

第1章:何が株価を動かすのか

セクターETF
セクターの短期の株価変動は基本的にETFの動きによって決まる。しかしこの人工的な短期株価とファンダメンタルとの乖離が、セクター内の優良グループに長期投資する投資家に素晴らしいチャンスをもたらしてくれるのだ。
 

例えば小売りやテクノロジーセクターでは、次のクリスマスセールスで大きな伸びが予想される場合に、このETFがらみの馬鹿げた同一行動パターンが表面化して、優良なコストコやホーム・デポのPERが劣悪なコウルズやJCペニーに比べてかなり低PERにしか評価されない状態になる。それを待って投資すればいいのだ。

債券市場とFRBの金融政策
私の口癖は「決してFRBに立ち向かうな」というものだ。FRBが景気を刺激するために低金利政策を続けている間は、株式投資のチャンスだ。しかしFRBが第二の政策を発動して金利を引き上げ始めた時は、選択の余地は狭まる。景気拡大による増益要因も一部にあるものの、全体としては金利上昇は株式市場にとってマイナス要因だ。
 

しかし賢明に立ち回れば、この金利上昇が株式市場にもたらすプレッシャーから儲けをあげることができるのだ。例えば金利上昇による減益懸念からインデックス・フューチャーが下落する局面は、業績があまり金利上昇に影響されない銘柄を安値で取得できる、またとない好機といえる。
 

また、FRBの引き締め政策がもたらす景気減速によっても、あまり業績悪化をきたさない銘柄もある。そういう時こそ、セルジーン、リジェネロン、アマゾン、ネットフリックスなど、景気循環とは無関係に利益成長が期待できるグロース株の買い時なのだ。
 

また、そういう時は、収益構造が景気循環や金利上昇に敏感な銘柄群、例えばアルコアやフリーポート・マクモラン・コパーなどを、アナリスト達が利益見通しを引き下げる前に処分することを考えるべきだ。

ファンダメンタル要因
企業には循環銘柄と成長銘柄がある。
 

前者は、トレンドとして成長はするが、景気循環に業績が左右される銘柄群だ。
後者は、時代の大きなテーマに乗っていて、景気動向に左右されずに持続的に成長を続ける銘柄群だ。
 

私が探しているのは、経済全体と比べても、同一セクター内で比べても、持続的に平均以上の成長を遂げそうな銘柄群なのだ。

その他の株価に影響を与える要因

  • インデックス・フューチャーがもたらす市場の歪み
  • 過大すぎるマクロの影響

第2章:「トップダウン」アプローチの手引き

自分なりのマクロ展望を持つ

私は投資する前に、世界経済が今どこに向かっているかについての、自分なりの見方を持つべきだという固い信念を持っている。この世界展望を得るために、私が最も信頼するのは企業自身が発表する業績開示時のリリースやコンファレンス・コールのテキストだ。その際、企業経営者が話す内外経済やセクター、そして自社の業績に関する展望や懸念を信用するのだ。私は経営の当事者が生の声で投資家に語る話のニュアンスをもっとも重要視するのだ。
 

もし世界中の経済活動のペースが分かれば、その時にどのタイプの企業に注目すべきかについて、専門的な判断が下せる。
 

我々は株式市場全体を、利益が経済成長に大きく依存するグループと、マクロ要因と関係なく増益トレンドが続くグループに二分して考える。業績を上げるために経済成長を必要とする銘柄群は「循環銘柄」と呼ばれる。製造業銘柄がそうだ。経済変動とかかわりなく利益を生み続ける銘柄群は「成長株」と呼ばれる。
 

慎重な銘柄選択は、2つのステップで行う。第1ステップは成長サイクルの見極め、第2ステップはそのサイクルに合った銘柄の選別だ。経済全体が力強く成長しているか、そこに向かって回復していると思われる局面では、循環株中心に選ぶ。循環株は景気に敏感に反応するため、上昇局面では高いリターンをもたらす。逆に景気が下降局面に入り、あるいは当面停滞が続くと判断するなら、成長株中心に選ぶ。成長株は経済成長がスローダウンする局面でも、コンセンサス予想並み、あるいはそれ以上のパフォーマンスをあげる傾向が強い。
 

こうしてまず世界経済見通し、その次にセクター成長率見通しをおさえて、それから個別企業の評価に着手するのだ。

第3章:スーパー・グロース銘柄の評価

スーパー・グロース銘柄とは?
個別銘柄を選ぶ前に、まず、企業経営者の現場感覚にもとづく世界経済の展望を固め、次にそれにフィットするセクターを絞り込む。こうして初めて具体的な銘柄選びの準備が整うのだ。
 

スーパー・グロースは循環株、通常の成長株、ディフェンシブなどと比べると常にPERが非常に高いため、一見、すでに買われ過ぎているように思えるのだ。
 

スーパー・グロースは、これからの社会、経済を支配する7つのメガ・トレンドに乗った銘柄群だ。私がスーパー・グロースを選ぶ時に用いている、これらの銘柄の強みを弱みを見極めるテストがある。
 

以下に示す10項目のテストを用いて、あなたのスーパー・グロースに1から10の間で点数をつけ、合計点を比べるのだ。

スーパー・グロース銘柄の評価項目

  • 何年にもわたって高成長を維持する潜在能力を持っているか
  • 市場は長期間高成長を続けられるだけ大きいか
  • 競争力を維持できるか
  • 増配や自社株買戻しによって持続的な株主還元が期待できるか、あるいはしっかりした成長戦略を持っているか
  • 国際的にも成長できるか
  • バランスシートは十分強力か
  • 数年後の予想利益水準に照らして、今の株価は割高か
  • 経営陣はどうか
  • 成長目標達成にマクロ経済の成長は必要か
  • 現在の売上マージンを維持し、あるいは一層高められるか

第4章:社会と経済の7つのメガ・トレンド

メガ・トレンドに乗った銘柄
最悪の相場環境や混乱した市場にも打ち勝って、長期的に株式投資で成功する鍵になるのは何か。それは、自分たちが生きていくこれからの世の中の基調になる「メガ・トレンド」を理解することだ。そして、そのトレンドに、もっともうまく乗っていると思われる銘柄を見つけるのだ。
 

メガ・トレンドに乗った企業は、ディフェンシブ銘柄ではない。かと言って驚異的なスーパー・グロース銘柄でもないが、気前よく配当してくれる。また、経済成長の後押しを必要とする、いわゆる循環銘柄でもない。政府による余計な介入や海外経済のスローダウンといった、株価の足を引っ張る問題にもあまり邪魔されない。そして、どんな相場環境下でも、株価が上昇を続ける条件を備えているのだ。
 

私は常に、投資にふさわしい大きなテーマを探している。それがあれば、相場が後退する局面では安全弁になり、ブームの時はそれにうまく乗れるからだ。
 

以上を踏まえて、永続性のあるメガ・トレンドを紹介しよう。

スマホ、ソーシャル・ネットワーク、クラウド(新しい三種の神器)
PCは今後は、長期的に衰退過程に入り、年々の売り上げは減少し、価格は下がり続けるだろう。いわゆるハイテク・セクターには、新しい環境に対応できないダイノサウルスみたいな企業がうろうろしている。
 

しかし、全てのハイテク企業が中生代の生き物ではない。実際、このセクターのひと握りの企業群は繁栄しており、まだその揺籃期にさしかかったばかりなのだ。それは、インターネットを取り込んで、スマホやクラウドを活用して大容量のデータを自在に取り出せる、新しいハイテクを事業化した企業群だ。
 

新しい時代に栄えるためには、企業はスマホ、ソーシャル・ネットワーク、クラウドという、新しい三種の神器の中、少なくとも2つにかかわっていなければならない。
 

推奨銘柄

  • 検索→グーグル
  • ソーシャル・メディア→フェイスブック
  • 顧客リレーション・ソフト→セールスフォース・ドットコム
  • プロフェッショナル・サービス→リンクトイン
  • 全ての小売業→アマゾン
健康、長寿社会
高齢化するベビーブーマーからティーンエイジャーにいたるまで、多くの国民は健康で長生きしたいと願っている。そのために毎日、体重や血圧を測り、健康的な食生活に気を配り、とりわけ、健康を損なう食品を避けたいという強い欲求を持っている。こうした欲求に応えている銘柄の多くが、ここ数年株価パフォーマンス面でもトップ・グループに入っている。
 

健康と長寿を保つために、自然食品やオーガニック食品を選びたいというトレンドは、まだ始まったばかりだ。このトレンドに関しては、様々な投資対象があり得る。
 

推奨銘柄

  • ホールフーズは、自然・オーガニック食品の幅広い品揃えで、すでにアメリカのほとんどの家庭に受け入れられている。
  • へイン、ホワイト・ウェーブ、アニーズは、これからの投資対象としてベストだ。
  • チポトレとパネラは、代表的な自然食品・健康食品を売り物にする外食チェーンだ。
  • そしてGNCホールディングスは、ビタミンとサプリの分野で高成長している小売業者だ。
倹約志向の新しい価値観
リーマン・ショック後の不況は、過去のものになりつつあるが、質素、倹約を重視する新しい世代を生み出した。
 

今や、多くの市民は何かを買う時に、値段に見合う価値があるかどうかを、シビアに自問するようになった。物品やサービスの購入だけでなく、どの店で買物をし、どこへバケーションに行くのかにいたるまで、無駄遣いをしない、という価値観が全ての消費の基本になってきたのである。
 

推奨銘柄
その結果、買物はTJXのようなディスカウント・ショップや、会員制のコストコでするのが賢明だと思う人が増えた。また、一流ブランドに比べて、ほとんど遜色ない品質なのに、はるかに安く買えるというので、ペリゴの作るようなストア・ブランド品がはやりだした。アウトレットがはやっているのもその流れで、タンガー・ファクトリー・アウトレットがNo.1だ。
 

マイカーを修理したければ、オート・ゾーンに出かけるし、健康な食事を家で食べる人が増えて、マコーミックのスパイスが売れている。
 

バケーションは1ヶ所での長期滞在型が人気になり、テーマ・パークのシーダー・フェアやシックス・フラッグがはやっている。エアラインとホテルを選ぶ際には、まずプライス・ラインのサイトを見ることから始めるのが当たり前になっている。また、1ドル・ショップは大人気で、大手のディスカウント・ストアからどんどん客を奪っている。

M&Aによる市場支配力の確保
株主価値を生み出すM&Aには、2つのタイプがある。1つは、買収によって業界内で寡占的な地位を築くものだ。もう1つは、買収の結果、その業界で支配的な地位を確保するものだ。
 

推奨銘柄
企業の中には、業界の集約化に自ら乗り出すことによって、成長を勝ち取っているところがある。
 

エアラインとレンタカー業界は今や、事実上寡占体制が確立され、デルタ、ユナイテッド・コンチネンタル、ハーツがお奨めだ。
 

新聞・テレビ業界のガネット、ジェネリック医薬品のアクタビス、アパレルのPVHとVFコープ、消費者向けパッケージグッズのB&G、そして電気機器業界のイートンは、競争相手を買収して合理化し、業界内のほとんどの企業を上回る業績を上げている。

見えないハイテク
最近、ウォール街は、いわゆるハイテク銘柄に関して明るい展望を持っていない。過去何十年にわたって進行してきたコンピュータを中心としたハイテクの進化も、行き着くところまで来たという感が強い。パソコンがメインフレームに取って代わり、それがラップトップになり、さらにはタブレット端末、そしてスマートフォンへと、進化してきたのだ。
 

しかし私には、新しい時代のトレンドたり得るイノベーションの世界が見えている。それは、ソーシャルとモバイルとクラウドの融合だ。
 

実はイノベーションは、私が「見えないハイテク」と呼ぶ企業群によって引き起こされている。これらの企業は、伝統的なハイテク企業が満たすことのできない、様々な新しいニーズに応えるために、新しい商品を次々に生み出している。
 

なぜ、古いタイプのハイテクと、見えないハイテクを区別することが重要なのか。それは株式市場は、アパレルやレストラン・チェーン、パッケージ・グッズなどの「つまらない」業種の中から、イノベーションを見つける能力がないため、見えないハイテク企業が不当に低く評価されているからだ。
 

推奨銘柄
かつてみんながデルやヒューレット・パッカードに期待したのと全く同じことを、私は今、コルゲート、ユニリーバ、クロロックスなどの消費者向けパッケージ・グッズに見ている。これらの企業の大方の印象は、面白みがなく、物真似体質で、いつも「画期的な」新製品のコマーシャルを流しているが、まったく中身がない企業群、といったところだろう。しかしそうではないのだ。これらの企業は中身で他社と差別化をはかっており、その中心的な手段はまさに「イノベーション」なのだ。

新しい医薬品:4つのバイオテック企業
薬の特許期限が切れると売値は90%下落すると言われており、これらの老舗大企業の成長率は劇的に低下してきている。PERが低く、割安に見えるかもしれないが、もう画期的な新薬を生み出す力は持っていないのだから、PERは低くて当然なのだ。
 

それと入れ替わりに、全く新しいタイプの医薬品メーカー、すなわちバイオテック・カンパニーが抬頭してきた。今では、彼等が前期の老舗に代わって高成長を生み出しているのだ。
 

私は番組の中でなるべく多くのバイオテック企業を取り上げるようにしている。いつも大化けする可能性のある企業を探しているのだ。これらの無名のバイオ企業の時価総額は、いずれもきわめて小さく、もし画期的な新薬が生まれたら、その将来性に比べて大幅に割安なのだ。
 

推奨銘柄
セルジーン、ギリアド、バイオジェン・アイデック、リジェネロンの4社は、市場全体の中でみても、スーパー・グロース銘柄と言えるかもしれない。この4社は、どのファンド・マネジャーにも不可欠な、老舗の大手医薬に取って代わる銘柄になったのだ。

石油・ガス革命
シェール・オイル、シェール・ガスの採掘・生産で、どんな企業が最も潤うのだろうか。私は、パイプラインを所有する投資組合が好きだ。とりわけ、有料道路のようにパイプラインを通過する石油や天然ガスの値段と無関係に、流れたボリュームに比例して料金が入るタイプが良いと思う。パイプラインは、石油、天然ガス、液化天然ガスのいずれにとっても、生産地から通常は遠く離れた消費地に輸送するための、もっとも効率的な手段だ。現時点では、国内で生産された石油と天然ガスを、消費地に届けるに足るパイプラインは整備されていない。したがって、当分の間、全国的にパイプラインに対する膨大な需要が存在する。
 

推奨銘柄
大手パイプライン会社の中では、国内最大のキンダー・モルガン・エナジー・パートナーズがベストだ。

第5章:会社分割による株主価値の創造

部分が全体を上回る
時として、部分の合計が全部よりも大きな価値を持つことがある。行き詰って分割を選択する企業を見つけられれば大儲けできるかもしれないのだ。
 

もし事前に、こうした分割候補企業を見つけて観察していたとすると、株価は4つの段階を経て上昇していくことがわかる。
 

第1幕は、分割の可能性が強いと市場が考え始めると、口伝に噂が広がり、株価が上昇し始める。
 

第2幕は、実際に分割される個々の事業の株価が、分割条件から割り出される理論株価に向けて上昇する。
 

そして分割されて生まれた新会社が、独立の公開会社として市場で取引され始める。
 

最後に新会社は常に新しい会社を探しているアナリストによって取り上げられ、これまで株価に不十分にしか反映されていなかった隠れた価値が、新会社の株価にフルに反映される。

株価上昇の4つのステップ
企業分割は、
(1)分割の思惑買いによる株価上昇、
(2)分割の正式発表、
(3)実際の分割時点にかけて株価が緩やかに上昇、
(4)各パーツの埋もれていた価値をフルに反映した株価の上昇、
という4つのステップを踏む。
10の分割候補企業

  • バクスター・インターナショナル
  • ジョンソン&ジョンソン
  • メルク
  • パーキン・エルマー
  • マニトウォック
  • DSTシステムズ
  • アプライド・マテリアスズ
  • ハリス・コーポレーション
  • オクシデンタル・ペトロリアム
  • ジョンソン・コントロールズ

第6章:株主価値を高める21人の名CEO

ウォール街のアナリスト達は、全く見当違いの誤りを犯すことがある。彼らはスプレッド・シートにもとづく利益予想モデルで、次の四半期のEPSを当てることにこだわる。そして長期的に何が、というより誰が株価を決めているかを全く理解しないのだ。そうしたアナリストの短期予想は、もしあなたがヘッジ・ファンド・マネジャーで、今期のコンセンサス予想を上回る利益成長を発表する企業を探しているのなら役に立つだろう。しかし株価の短期的な気まぐれなアップ・ダウンに痛めつけられ続けている個人投資家には、何の役にも立たない。
 

そこで私は本書を通じて、全く新しい有望銘柄の方法を示したい。
 

CEOの人格と実績を知ることは、投資で金持ちになれるかどうかを決める「最大の」要因だと断言してもいい。ところが現実は、多くの投資家はだれがその会社を統率しているかを二の次にして、今期のEPSがコンセンサス予想を上回るかどうかといった問題を最重要視するのだ。

株主価値を高める21人の名CEO

  • AIGのボブ・ベンモシュ
  • ディズニーのボブ・アイガー
  • デールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ
  • ハネウェルのデイブ・コート
  • イートンのサンディ・カトラー
  • PPGのアラン・ムラリー
  • フォードのアラン・ムラリー
  • パネラ・ブレッドのロン・シャイチ
  • スターバックスのハワード・シュルツ
  • ドミノのパトリック・ドイル
  • ベンタスのデブラ・カファロ
  • PVHコープのマニー・チリコ
  • VFコーポレーションのエリック・ワイズマン
  • バッファロー・ワイルド・ウィングスのサリー・スミス
  • キンダー・モルガンのリチャード・キンダー
  • ボーイングのジム・マクナニー
  • ペプシコのインドラ・ヌーイ
  • EOGのマーク・パパ
  • AFCエンタプライゼズのシェリル・バチェルダ
  • メイシーズのテリー・ランドグレン
  • ピア・ワン・インポーツのアレックス・スミス

第7章:いつ売ればいいのか

「売り」を示す10のシグナル
この章では、「売り」を示す10のシグナルをリスト・アップした。これらはいずれも、私自身が大損した反省を踏まえて、慎重な投資家になるべく実践してきたものだ。
 

私がこうした失敗を犯したのは、次のいずれのかのケースだ。
 

1つは、その銘柄を買う拠りどころだった基本条件が変わったにもかかわらず、行動を起こさなかった場合。
 

2つ目は、新しい不安材料が発生したのに、多分大丈夫だろうと決めつけた場合。
 

そして3番目は、その銘柄を買った時に立てたシナリオが崩れたにもかかわらず、新しい現実に目をつぶった場合だ。

見通しの前提が変わった時には、直ちに売却して損失を最小限に食い止めよ
ある銘柄にはっきりした理由で投資するとき、それが不動産プレーであれEPS成長プレーであれ、会社分割シナリオであれ、そのシナリオが崩れた時点で見限るべきなのだ。保有するために他の口実を探してはいけない。
少しの利益のために元も子もなくすな
「先行きに関する不安が大きい時には、まだ少ししか儲かっていないとしても、売却して利益を確保したことを後悔するな」
 

もし本当に心配な問題を抱えている銘柄を保有している場合には、その時点で儲かっているかどうかなどは一切無視すべきだ。
 

もし、じっくり長者を目指すのであれば、ダウンサイド・リスクの可能性を、アップサイドの可能性よりも何倍も重視する慎重さが必要だ。暴落するかもしれない懸念を抱えた市場環境の下で、もう少し儲けたいと頑張るのは、愚の骨頂だ。人々の相場に関するコメントが肯定から否定的トーンに変化する局面では、小さな儲け、あるいは小さな損失で手を打つべきだ。

ビッグ・ニュースで下げた銘柄は即売れ
もし繰り返しグッド・ニュースが伝えられている時に株価が上昇しない場合には、何かそれを阻んでいるマイナスの材料があるのかもしれないと考えるべきだ。他の投資家がすでに知っていることを自分は知らないか、あるいは自分の推理が間違っていると考えるべきなのだ。想定通り株価が上昇しない理由がはっきりするまで保有していようなどという考えは間違いで、直ちにその銘柄を売るべきだ。
 

好材料にも悪材料にも、株価がどう反応したかを注意深く考察する必要がある。もし悪材料が出ても株価が下落しない時は、底入れと考えてもいいかもしれない。しかし好材料が出たにもかかわらず株価が上昇しない時には、先ず株を売ってから理由を考えるべきだ。

アナリストが一斉に株価格付けを引き上げた時は売りだ
複数の同業他社の業績悪化は要注意だ
ライバルの1社が業績未達を発表した時は優良銘柄を持ち続けてもいいが、2社目も振るわない決算に終わった時は「即売り」だ。
 

業績の悪化しているライバルが、値引きを始め業界のファンダメンタルを悪化させるような行動に出ることも予想される。
 

ライバルの不幸に乗じて優良銘柄を割安に買い増すのは結構だ。しかしライバル2社が業績不振に陥った時には、保有銘柄も売り時だ。

上げ相場に乗れない銘柄は売りだ
S&P500平均が1%以上上がった日に、保有銘柄の株価の動きをチェックせよ。
 

私の運用する基金の記録を改めてレビューしてみて、気になる一つのパターンに気がついた。相場が大きく上昇した時にそれに参加できなかった銘柄群をよく見てみると、それが属するセクター内のほとんどの銘柄も上昇していない場合が多いことが分かった。それは明らかに「売り」のシグナルなのだ。大きな上げ相場に乗れないセクターや銘柄は、好き嫌いやその業績見通しとは関係なく、直ちに売るべきだ。
 

市場平均が1%以上上昇した日に参加できなかった銘柄群は、その次に相場が下げる日には大きく下落することが多い。
 

「一度、二度ならず数回にわたり平均1%以上の相場上昇に参加できなかったセクターの銘柄は売れ」

セクター全体にまたがる問題が表面化すれば売りだ
金融セクターは信用するな
もし銀行株に何か問題が起きたら、いろいろ調べたり会社の釈明を待ったりせず、直ちに手を切るべし。
 

銀行の場合は一つだけの問題や懸念で終わることは絶対にない。どんな問題もいろいろな関連があって、一つだけ片付けばそれで終わりとはならない。
 

銀行が融資基準を厳しくしたと聞いたら、「売り」だ。預金を問題のあるプロジェクトに投入したと聞いたら、「売り」だ。粉飾の疑いで司法省かFRBの査察を受けていると聞いたら、「売り」だ。財務省やFRBから資本不足を指摘されていると聞いたら、やはり「売り」だ。

小売りチェーンの既存店舗売上減は「売り」
3か月連続で既存店舗売上が前年同月を下回ったチェーンの株は「即売り」だ。
 

前年比で売上がマイナスになるということは、それだけ在庫が増えていることを意味する。そしてマイナス幅が大きければ大きいほど、大きく値引きしなければいけなくなる。この悪循環はある時点を超えると危機的状況に陥り、簡単には立ち直れなくなるのだ。

相互に関連した銘柄への集中投資は高くつく

第8章:強い思い込みはケガのもと

  • 投資対象銘柄にほれ込むな
  • 会社以上に強気になるな
  • 最高のCEOでも奇跡は起こせない
  • 過度の猜疑心も害になる
  • 時にはファンダメンタルが大きく改善することもある
  • 粉飾決算は問題が解決するまで勝ち目はない

【「ジム・クレイマーのローリスク株式必勝講座」のリンクと目次】


ジム・クレイマーの“ローリスク"株式必勝講座

「ジム・クレイマーの“ローリスク"株式必勝講座」の目次
第1章 何が株価を動かすのか
第2章 トップダウンアプローチの手引き
第3章 スーパー・グロース銘柄の評価
第4章 社会と経済の7つのメガ・トレンド
第5章 会社分割による株主価値の創造
第6章 株主価値を高める21人の名CEO
第7章 いつ売ればいいのか
第8章 強い思い込みはケガのもと
  • この記事を書いた人

上原@投資家

「株式投資で人生を豊かにする方法」をテーマに情報発信しています。機関投資家の視点で最新のマーケット情報&投資ノウハウをお届け。【経歴】外資系金融で日本株アナリスト→外資系ファンドのファンドマネージャー→ニート【現在の投資先】日本株、米国株、新興国株、エンジェル投資、国内不動産、海外不動産、仮想通貨、NFT。

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