イギリスの築古学生マンション投資は本当に魅力的か?

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イギリスの学生マンション投資の紹介をされたのですが、利回り保証や物件の買い取りオプションがついていて、低リスク高リターンな投資案件に思えます。以下に今回紹介された物件の特徴を並べますが、この条件を見る限りはとても魅力的です。

  • 物件概要:イギリスのブリストルにある学生マンション。1870年代に建設されたホテルのリノベーション物件。
  • 物件価格:9.9万ポンド(諸費用込みで1,500万円強)。
  • 好立地:ブリストル駅から徒歩1分のロケーション。3年後には物件隣接地に名門ブリストル大学の新キャンパスが開校(物件から徒歩5分)。
  • 利回り保証:当初5年はネット利回り7.5%をデベロッパーが保証。
  • 買取保証:3年後にデベロッパーが購入価格の110%で買い取ってくれるオプション付き。
  • 節税効果:日本の税制で建物部分が4年で償却可能(物件価格の約90%が建物価値)。

 

この投資案件リスクとリターンについて検証してみます。

イギリスの学生マンション投資の特徴

まずはイギリスの学生マンション投資の特徴についてまとめます。

  • CBREの調査によると、イギリス国内の学生用マンションの稼働率は平均99%(ただし4年前のデータ)。
  • イギリスは外国人留学生の数が年々増えている一方で、新しい学生マンションの建設が限られているため、学生マンションの供給が不足している。
  • イギリス国内には大学が150校しかなく(日本は約800校)、そのほとんどが国立大学で経営破たんやキャンパス移転の事例は過去にない

 

このような背景から、イギリスの学生マンション投資は空室リスクが低くて利回りは高い投資物件として世界中から注目されています。

今回紹介された案件は「実質利回り7.5%を5年間保証」という利回り保証がついていますが、探してみると他にも利回り保証がついている物件が市場に出回っているようです。
 

日本国内の不動産投資だったら実質利回り7.5%保証の案件なんて出てきません。

上述の通りイギリスでは学生マンションが不足しているので、空室リスクが低いにもかかわらず家賃が高いです。それに加えてイギリスは建築費用が安いので、実際には保証している利回りよりもさらに高い利回りで運営することが可能なんでしょう。

さらに住宅デベロッパーが銀行から借りる金利はかなり高いので(こちらの記事によれば7%もとられるとのこと)、銀行からの調達よりも「7%以上の利回り保証をしてでも個人投資家から資金を調達したほうが合理的」という判断になるわけです。
 

一方で、イギリスの学生マンション投資のデメリットは以下の通りです。

  • 為替リスクがある
  • ローンを組んでレバレッジをかけることができない
  • 現地の規制や税制に関する知識の不足
  • 管理会社に全て任せることになるので自分の裁量がききにくい
  • 投資詐欺リスク

 

日本政策金融公庫を使えば融資してもらうこともできそうな気もしますが、国内で不動産投資をするのに比べるとハードルは高そうです。日本政策金融公庫の融資についてはこちらの記事が詳しいです。
 

イギリス・ブリストルとはどんな街なのか?

今回紹介された物件はブリストル駅から徒歩1分の距離にあります。

写真:リノベーション中の本物件(Google Mapより)
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ブリストルの人口推移

ブリストルはイギリス西部にある湾口都市で、ロンドンまでは車で約2時間半、電車で約2時間の距離です。

人口は2015年で449,300人で、イギリス国内の都市では8番目の人口規模になります。ブリストルの人口は2005年から2015年にかけて43,900人増加しました。増加率は+10.8%となり、これは同期間のイギリス全体の人口増加率+8.0%よりも高い伸び率となります。(出所:ブリストル市HP

ブリストル政府の推計によると、ブリストルの人口は2027年には50万人を超えて、2039年までに今よりも人口が23%増えると予想されています(同期間におけるイギリスの人口増加率は16.5%)。
 

ブリストル駅の乗降人員

物件から徒歩1分の距離にあるBristol Temple Meads駅の2016年の年間乗降人員は923.4万人です(乗り換え除く)。1日当たりに換算すると25,300人となります。Wikipediaによれば、年間乗降人員は年々増えているようです。

ちなみに乗降人員1日25,300人というのは日本でいうと東京の信濃町、大久保、鶯谷ぐらいの規模です。ブリストル駅はそこまで人でにぎわっているというほどでもなく、かといって閑散としているわけでもなさそうです。

写真:ブリストル駅(Google Mapより)
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新キャンパスの開校が予定されているブリストル大学とは?

ブリストル大学は1909年に設立されたイギリスの公立大学です。イギリスの教育専門誌「Times Higher Education」がまとめた2016-2017の世界大学ランキングによると、ブリストル大学は世界で71位、イギリス国内では9番目にランクされています。

学生数は学部生と大学院生合わせて21,905人です。ちなみに日本の大学だと東京大学が27,955人、早稲田大学が52,078人、青山学院大学が18,835人、明治大学が32,890人です。
 

ブリストル大学の新キャンパス開校計画

今回の物件はブリストル大学までは徒歩20分の距離がありますが、ブリストル大学はブリストル駅の近く、物件から徒歩5分の距離に新キャンパスを開校する予定です。

ブリストル大学の新キャンパス計画については以下のサイトに詳細が載っていますが、現在の計画では2021~22年に開校する予定となっています。

Temple Quarter campus

今回の物件と新キャンパスの位置関係は以下の通りです。

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ブリストル大学の新キャンパス開校のスケジュールは以下の通りです。

  • 2018年春 最終決定
  • 2021~2022年 キャンパス開校

 

イギリスの不動産価格の動向と将来見通し

イギリスの不動産事情と価格動向

イギリス国民の間では「不動産の価格は上がり続ける」という不動産神話がいまだに生き続けています。事実、イギリスの不動産価格はリーマンショックの時のような一時的な下落はありますが、以下のように長期的にはずっと上がってきました。

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出所:UK House Price Index
 

イギリスの不動産価格が上がり続けている理由は以下の通りです。

  • イギリスは人口が増え続けており、経済が右肩上がりで成長している
  • イギリスは新しく建設される不動産が少ないため供給が増えにくい
  • イギリス人には古い家を直しながら長く住む文化があり、地震な
  • どの自然災害のリスクもないので建物が古くなっても価値が下がらない

 

どれも日本とは真逆の状況です。

日本は人口が減っており、経済も停滞しています。新設住宅着工も日本の方がイギリスよりもはるかに多いです。人口が減っているにもかかわらず住宅の供給は増えているので、日本の空室率はイギリスよりもずっと高いです。

さらに日本の場合は自然災害のリスクや新築を好む文化があるため、築古になればなるほど建物の価値が下がってしまいます。
 

今後のイギリスの不動産価格はどうなる?

イギリス国内の不動産価格については、イギリスで不動産の管理や仲介、コンサルティングなどのサービスを提供しているサヴィルズ社が定期的に不動産マーケットのレポートを発行しています。

2016年10月に発行されたレポートによれば、2017年から2021年の5年間でイギリスの不動産価格は13%上昇すると予想されています。Brexit後の不透明感から住宅価格の伸び率は今までと比べると鈍化する見込みですが、それでも着実に価格上昇が続くと予想されています。

イギリスの住宅価格予想の概要は以下の通りです。

  • EU離脱の交渉が完了するまで不透明な状況が続く
    イギリスのEU離脱の交渉は2019年前半までには完了する見込みだが、それまでは景気の見通しが不透明な状況が続く。経済は成長を続けるものの、家計の所得の伸び率は鈍化し、失業率は高まる。既に家計の負債比率は高くなっているので、家計が積極的に借り入れを増やして不動産を買うような環境でもない。
  • 2020年に向けて景気は回復するが、同時に金利も上昇する
    2019年前半にEU離脱の交渉が終われば、景気の不透明感が緩和され、個人消費の景況感の回復や低金利が住宅価格の押し上げ要因になる。2020年に向けて景気は回復するものの、それは同時に金利の上昇を招き、住宅価格を押し下げる働きをする。
  • 住宅価格の上昇率は鈍化するものの、2020年に向けて上昇を続ける
    上記のような景気見通しから、2017年と2018年は住宅価格の上昇率が鈍化することが見込まれている。しかしその後は景気の回復とともに2019年から再び住宅価格の上昇が加速し、2021年からは金利の上昇によってまた価格上昇が鈍化する見込み。

 

Savills Researchによる地域別の2021年までの住宅価格予想は以下の通りです。

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今回の物件があるブリストルはSouth Westにあるので、2021年までに住宅価格が14%上昇すると予想されています。イギリス国内の平均の11%やロンドンの11%よりも高い価格上昇率が予想されています。
 

ポンド円の動向

為替動向を予想することは不可能ですが、現在の為替水準は過去のレンジと比較するとかなり円高ポンド安な状況です。

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イギリス築古学生マンションの投資リターン分析

実際に投資のリターンを検証してみます。

購入時にかかる費用

  • 物件価格(税込み):99,000ポンド
  • 諸費用:10,000ポンド
  • 合計:109,000ポンド

 

保有・売却時にかかる費用

  • 保有時にかかる税金:0ポンド(年間家賃収入が基礎控除額11,000ポンド以下なので非課税)
  • 物件売却時にかかる税金:0ポンド(学生に特化したコンドミニアムのキャピタルゲインは非課税)
  • 諸費用:7,700ポンド(売却価格の7%程度と想定)

 

想定収益(3年後に110%で買い取ってもらった場合)

  • 3年間の家賃収入(ネット利回り7.5%保証):22,275ポンド
  • 売却価格:108,900ポンド
  • 節税メリット:28,700ポンド(物件価格99,000ポンド×建物比率90%÷4年×税率43%×3年分
  • 合計:159,875ポンド

 

合計キャッシュフロー

  • 合計投資額:116,700ポンド(1,691万円)
  • 想定リターン:159,875ポンド(2,319万円)

 

1ポンド=145円で計算すると、総投資額は1,691万円、総リターンは2,319万円です。

以下の図のようにキャッシュフローを計算すると、不動産購入の際にかかる諸費用を全て合わせてもIRRは13.5%とかなり高いです。

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家賃収入のネット利回り保証と3年後の110%買取りオプションがついているので、為替リスクを除けばこの13.5%のIRRはほとんど保証されています。

今回の投資物件における主なリスクは、
・為替の変動
・不動産管理会社・現地デベロッパーの倒産
・今回の案件が投資詐欺である可能性

の3つぐらいでしょうか。

これらのリスクの大きさを測るのは難しいですが、利回り保証と買取りオプションのおかげでかなり低リスク高リターンの案件と言えるでしょう。

ローンが使えないのでレバレッジを活用することはできませんが、1,500万円を即金で払えるのであれば魅力的な投資案件だと思いました。

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