株式投資の手法っていろんな種類がありますよね。
数多くの株式投資の本が出版されていますし、Twitterやブログ、Youtubeでもいろんな方が情報発信しています。
そんな中、「どの投資手法を選べばいいか分からない・・・」と悩んでいる方もたくさんいると思います。
しかし残念ながら、「この手法が正解だ」という絶対的な答えはありません。
生活スタイルや性格、目標のリターンによっても投資手法は変わると思いますし、人によって得意不得意もあると思います。
そこで当記事では、投資スタイルを「バリュー株投資、グロース株投資、GARP投資、モメンタム投資、高配当株投資、決算プレー」の6種類に分けて、それぞれの手法の稼ぎ方をまとめました。
各投資スタイルの特徴と利益の源泉、メリット・デメリット、そしてさらに深く学びたい方向けにおすすめの書籍を解説していきます。
投資スタイル別の稼ぎ方を網羅的にまとめた記事ってあまり見たことがなかったので、自分の投資スタイルに悩んでいる方の参考になれば嬉しいです。
バリュー株投資の稼ぎ方
市場で見放されて割安になっている銘柄が適正な価格まで戻ることを期待して投資するのがバリュー株投資です。
バリュー株投資にはいくつか流派があって、「企業が保有する資産に対する割安度を見る資産バリュー投資」や「利益に対する割安度を見る収益バリュー投資」があります。後ほど別枠で紹介する高配当株投資もバリュー株投資の一種だと思います。
それぞれの流派で使われる株価指標が異なります。
資産バリュー投資では、PBR(株価÷1株あたり純資産)やネットキャッシュ÷時価総額が使われますし、収益バリュー投資ではPER(株価÷1株あたり利益)やPCFR(株価÷1株あたりキャッシュフロー)が使われます。
バリュー株投資の利益の源泉
「割安な銘柄」というのは、市場がその企業の価値を見落としていて株価が割安になっている状態です。
市場が見落としていた企業の価値に気づいて、株価が再評価されること(PBRやPERといった株価指標が上がること)が利益の源泉となります。
バリュー株投資で稼ぐためには、企業の価値を見極める能力と、なぜ株価が割安になっているのか市場の考えを察する能力が必要になります。
バリュー株投資に向いている人
バリュー株投資で勝つためには、市場の間違いを見つけ、株価が再評価されるのを根気よく待つ必要があります。なので、不人気になっている銘柄を買い向かう勇気がある人、周囲と違う行動を取ることに抵抗を感じない人に向いています。
株価が再評価されるまで時間がかかることも多いので、含み損の状態でも自分の考えを信じ続ける根気の強さも必要になります。
自分の信念に基づいてドッシリと構えている方が成功しやすいです。
バリュー株投資が向いていない人
性格的にイケイケな方、パリピな方はあまりバリュー株投資には向いていないと思います。そういう方は短期で大きく稼ぎたい、盛り上がっている銘柄の波に乗りたいと考えがちで、バリュー株投資とは真逆の考え方になります。
バリュー株投資は逆張り投資になりがちなので、含み損になることも多いです。含み損に耐えるメンタルをお持ちでない方や、他人の意見に流されやすい方もバリュー株投資には向いていないです。
バリュー株投資のおすすめ本
バリュー株投資の最初の1冊としては「千年投資の公理」がおすすめです。バリュー株投資の考え方や、企業を選ぶ時の視点が学べます。
資産バリュー株であれば、かぶ1000さんの本が分かりやすいですね。初心者向けに書かれているので読みやすいですし、バリュー株投資の入門としておすすめです。
あと、バリュー株投資をやるのであれば財務諸表や株価指標の読み方を知っておく必要があります。
ファンダメンタルズ分析のやり方を学べるおすすめ書籍は以下の2冊です。
赤い本(ファンダメンタル投資の教科書)が入門編で、さらに踏み込んで業績予想や目標株価の計算までやりたい方は「外資系アナリストが本当に使っているファンダメンタル分析の手法と実例」を呼んでみるといいと思います。
高配当株投資の稼ぎ方
高配当株投資では配当利回り(配当÷株価)が使われます。配当利回りが高い会社に投資をすることで、投資した金額(株価)に対して高い配当を狙えます。
高配当株投資はバリュー株投資の一種ですが、誤解している方が多いようなのであえて分けてまとめました。
誤解というのは、
「高配当株投資は配当が目的なので、すでに資産が大きい人がやる投資手法だ」
「高配当株投資ではキャピタルゲイン(株価の値上がり益)は期待できない」
といったものです。
しかし、高配当株投資でもキャピタルゲインを狙うことは可能です。
①財務体質が健全で減配リスクが低い、②配当の成長が見込める、③過去平均や市場平均よりも配当利回りが高いといったことを意識して銘柄を選べば、配当の成長や配当利回りの平均回帰が株価のドライバーとなります。
高配当株投資の利益の源泉
まずは毎年の安定配当が利益の源泉となります。配当利回りが3%の株を変えば、減配されない限りは投資金額に対して3%の配当を毎年受け取ることができます。
グロース株投資に近い考え方になりますが、配当が成長すればそれに伴って株価も上昇することになります。配当の成長には「利益の成長」もしくは「株主還元の拡大(配当性向の引き上げ)」のいずれかが必要です。
そしてバリュー株投資と同じ考え方として、配当利回りが過去平均や市場平均よりも高い銘柄に投資をすれば、配当利回りが平均に回帰すれば株価が上昇することになります。
配当の成長、配当成長の拡大、配当利回りの正常化の3点が高配当株投資の利益の源泉です。
高配当株投資に向いている人
毎年安定した配当がほしい人(持ち株を売却せずに収入がほしい人)は高配当株投資がおすすめです。
また、将来の成長性を見極めるのは苦手だけど、企業の財務体質の良し悪しは分かるという方は高配当株投資に向いています。
財務体質が健全で減配リスクが低い会社に投資できれば、仮に未来の見通しが間違って配当が成長しなかったとしても、投資額に対して2~5%の配当金は毎年受け取ることができます。
配当が安定収入として入ってくるので、バリュー株投資に比べると精神的なきつさは軽減されていると思います。
高配当株投資に向いていない人
バリュー株投資と同じで、イケイケな人、パリピな人、短期で大きく稼ぎたい人は高配当株投資に向いていません。
高配当株投資のおすすめ本
投資家Youtuberの坂本彰さんの「10万円から始める高配当株投資術」が分かりやすかったです。単純に配当がたくさんもらえるものを買いましょうというのではなく、減配リスクを避ける方法がしっかりと書かれている点が良書です。
グロース株投資の稼ぎ方
グロース株投資は将来の利益成長が見込める会社に投資をします。
バリュー株投資ではPERが低い銘柄が投資対象となりましたが、グロース株投資ではむしろ「PERが高い銘柄」が投資対象となります。
見た目のPERが高く見えても、将来の利益成長率が高いので、将来の利益をベースにPERを計算すると実は割安になる、という会社を狙います。
グロース株投資の利益の源泉
株価は「EPS(企業業績)×PER(市場の期待値)」に分解することができます。
バリュー株投資はPERの上昇(市場からの低い評価が改善すること)が株価のドライバーとなりますが、グロース株投資ではEPSの成長が一番のドライバーです。
株式市場は短期志向なので、株価が織り込んでいる未来はせいぜい1~2年先までということがほとんどです。3年以上先の未来を見据えて、高い利益成長が見込める銘柄を見つけることができれば、PERの低下以上にEPSが成長してくれるので、グロース株投資で稼ぐことができます。
グロース株投資に向いている人
これから起こる社会の変化や、企業の未来を想像するのが好きな方、得意な方に向いています。自分が好きな会社の成長を見守りたいという気持ちで投資するのもありです。
グロース株投資に向いていない人
グロース株投資では市場からの期待値が高い会社に投資するので、決算が市場の期待値に届かないと投資家の期待値が低下(PERが低下)して株価は大きく下落することになります。
なので、損切りが遅い人や、自分のアイデアの間違いをなかなか認められない人にはあまり向きません。
グロース株投資のおすすめ本
グロース株投資本の一番の定番はオニールです。株価がこれから大化けする銘柄の特徴を表したCAN-SLIMという銘柄選定基準がとても有名です。
海外投資家も注目する大化け前のチャートパターン「カップウィズハンドル」についても解説されています。
モメンタム投資の稼ぎ方
モメンタム投資はその名前の通り、モメンタム(勢い)が強い会社に投資をする手法です。ここ数年の上昇相場ではもっとも勝ちやすかった投資手法だと思います。
モメンタムは「利益のモメンタム」と「株価のモメンタム」の2種類があります。チャートを見ながら株価モメンタムが強い銘柄を探してきて、次にその会社のファンダメンタルズも確認します。
株価が上昇している裏付けとして良好なファンダメンタルズ(つまり強い利益モメンタム)があれば、その会社が投資対象となります。
いくら株価モメンタムが強くても、ただテーマ株として盛り上がっているだけ、仕手筋の買いが入っている、ファンダメンタルズとは関係ない需給要因で買われている、といった銘柄は下落のスピードも強いので注意が必要です。
株価とファンダメンタルズのどちらも強い銘柄に投資をするのがモメンタム投資で勝つ秘訣となります。
グロース株投資とモメンタム投資は似ている概念ですが、私の感覚的にはグロース株投資の方がより長期志向で、モメンタム投資は投資の時間軸が1年以内でより短期志向というイメージを持っています(もしこのイメージが間違っていたらどなたか指摘してください)。
モメンタム投資の利益の源泉
モメンタム投資では「利益の成長」と「PERの上昇」の両方が株価のドライバーとなります。
もともとあまり注目されていなかった会社が利益成長を伴って新高値を更新し、新しい投資家も参入してきて市場からの評価も切り上がって株価が上昇していきます。
「株価が新高値を更新する」ということは、「その会社が今までとは違う新しいフェーズに突入する」ということを意味します。
新しい成長フェーズに入ることで、利益の成長だけでなく市場からの評価も切り上がることになります。
モメンタム投資に向いている人
モメンタム投資は「株価と利益に勢いがある銘柄」を買う手法なので、勢いがなくなってきたらすぐに損切りします。損切りルールがシビアで投資の時間軸も短めなので、企業のファンダメンタルズや株価を頻繁に確認する必要があります。そのため、投資にある程度時間をかけられる人に向いている手法です。
一方で、投資の時間軸が短い分、1年間で何回も資産を回転させることになります。成功も失敗もたくさん経験することになるので、学習スピードは長期投資に比べると早いと思います。
わりと頻繁に売買することになるので、うまくいけば高い投資リターンも狙えます。
モメンタム投資に向いていない人
投資の時間軸が短いので、長期保有でほったらかしにしたい方にはあまり向きません。投資にかける時間があまりない人も難しいかもしれません。
グロース株投資と同じで、自分の間違いをなかなか認められず、損切りが遅い方にはあまり向きません。モメンタムが弱くなってきたら機械的に損切りをするぐらい、感情を排除してルールを徹底できる方に向いている手法です。
モメンタム投資のおすすめ本
一番のおすすめはミネルヴィニです。グロース株投資・モメンタム投資の定番本ですね。
リスク管理の手法について書かれた章は、グロース株投資家だけでなくすべての投資家に読んでほしいです。
個人投資家のDUKE。さんが書いたこちらの書籍もおすすめです。
エントリータイミングや損切りのルールが明確なので、ミネルヴィニやオニールの本を読んでもいまいち実践できない、という方にぜひ読んでもらいたいです。
GARP投資の稼ぎ方
GARP投資はバリュー株投資とグロース株投資のハイブリッド的な投資手法です。
GARPは「Growth at Reasonable Price」の略で、日本語に訳すと「成長株を適切な価格で」という意味です。
成長性は見込める会社を適切な価格で買う、というのがGARP投資の基本的な考え方です。
GARP投資では、バリュエーションの水準も意識しつつ、しっかりとしたファンダメンタルズ分析に基づいて長期的な成長が見込める会社を選別します。
ウォーレン・バフェットはバリュー株投資家であるというイメージが強いですが、長い投資のキャリアの中で投資スタイルを徐々にベンジャミン・グレアムのバリュー株投資の手法からGARP投資へとシフトしてきました。
バフェットの名言の1つである「適切な会社を素晴らしい価格で買うよりも、素晴らしい会社を適切な価格で買う方がはるかに良い。」という言葉がGARP投資の本質をよく表していると思います。
GARP投資の利益の源泉
GARP投資の利益の源泉は、企業の長期的な利益の成長となります。
割高な価格は避けて買うので、バリュエーション(PER)の低下は株価の成長を妨げません。むしろ、企業の利益成長が続けば投資家からの信頼も増し、PERが今以上に高くなる可能性も十分にあります。
株価=EPS×PERで考えた場合、「利益成長」と「バリュエーションの拡大」の両方がGARP投資における株価のドライバーとなります。
GARP投資に向いている人
GARP投資はグロース株の要素も取り入れたバリュー株投資ということで、考慮すべき要素がとても多いです。
- 企業の競争優位性は今後も持続するのか?
- 高い利益成長率はいつまで続くのか?
- 企業の適切なバリュエーションはどの程度なのか?
このように、企業の競争力、成長性、割安感を深く分析する必要があります。
財務分析や株価分析の高度なスキルが要求されるため、株式投資も企業分析もどちらも好きだという方に向いています。
GARP投資に向いていない人
テクニカル分析など株価チャートを見るのは好きだけど、企業分析を深堀りするのは苦手だ、という方にはあまり向いていません。
企業の長期的な利益予想を考える必要もあるため、数字に弱い人もあまり向いていないと思います。
GARP投資のおすすめ本
一番のおすすめ本は、フィデリティの伝説的なファンドマネージャーであるピーター・リンチの書籍です。
バリュー株投資やグロース株投資との違いを見ながら学べるこちらの本もおすすめです。
ピーター・リンチの方が投資手法がより具体的に書かれているのでおすすめですが、こちらの本を読むと「なぜGARP投資が優れているのか」という点がよく分かります。
書籍のタイトル「とびきり良い会社をほどよい価格で買う方法」がそのまま「GARP投資」のことを表していますね。
決算プレーの稼ぎ方
最後は決算プレーについてです。
これまでのバリュー・グロースの枠から外れるのでおまけ的な感じにはなりますが、個人的には一番稼ぎやすく、かつ短期で大きなリターンも狙える手法だと考えています。
決算プレーは「決算のポジティブ・ネガティブサプライズを事前に予想してトレーディングする手法」です。
決算後の株価が読みにくいことから「決算ガチャ」とか「決算ギャンブル」とか呼ばれることもありますが、実際には決算プレーで稼いでいるヘッジファンドマネージャーも多く、慣れれば稼ぎやすい手法だと思います。
決算プレーの利益の源泉
良い決算を出しただけでは株価は上がりません。株価は「市場の予想を上回る良い決算」が出て初めて反応します。
身の回りの変化や経済統計、同業他社の動向などを見ながら、ポジティブサプライズを出しそうな会社を探します。
例えば、日銀短観を見れば足元で見通しが改善している業種が分かります。他にも、経産省の鉱工業生産を見れば業種別に足元の出荷や在庫の状況がわかります。直近決算の説明会資料を見れば、会社計画に上方修正の余地があるのかヒントが含まれていることも多いです。
様々な情報ソースを使って決算のサプライズを予想して、事前に先回りして買っておくことが決算プレーの醍醐味となります。
決算プレーに向いている人
決算プレーで稼ぐためには、地道な努力の積み重ねが必要です。
決算に先行する統計データを探す、会社ごとの計画の出し方の癖を把握する、適時開示や決算資料をひたすら読みまくる・・・
こういった地道な努力の積み重ねで自分が得意な業種や会社が出てくるので、時間をかけて情報収集する地道な作業が得意な人に向いています。
また、決算プレーは連想ゲームのような側面もあります。「風が吹いたら桶屋が儲かる」とまではいかなくても、「この業界が儲かってるということは、次はあっちの業界に需要がきそうだな・・」といったことを連想する想像力がある人に向いています。
決算プレーでは、決算のたびに当たり・ハズレといった結果がわかります。予想通りの決算が出たらガッツポーズをして喜び、決算がハズレた時はマウスを叩きつけるぐらい、決算プレーに熱中できる人に向いています。
決算プレーに向いていない人
いろんな企業の決算・適時開示をひたすら読み込む必要があるので、あまり時間がない方には向いていません。
企業の業績や世の中の動きにあまり興味がない人も向いていないと思います。
決算プレーのおすすめ本
ありません(笑)
どなたかご存知の方がいたら教えてほしいです。
投資スタイル別の稼ぎ方まとめ
最後までご覧いただきどうもありがとうございました!
最後に、投資スタイル別の特徴と利益の源泉をまとめた画像を貼っておきます。
いろんな投資スタイルがありますが、投資スタイルによって求められるスキルや利益の源泉が異なります。
どれぐらいの頻度で取引をして、どれぐらいのリターンを求めるのか。そして自分の得意なことは何なのか。
このあたりが明確になると、自分に合った投資スタイルが見えてくるんじゃないかと思います。
ちなみに私は主にGARP投資を実践しつつ、決算プレーで利益を伸ばすというスタイルでやっています。私の投資スタイルと、利益の源泉についても画像でまとめておきました。
皆さんの投資スタイルのご参考になれば嬉しいです!