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「お金2.0」のまとめとレビュー:新しい時代を生き抜くバイブルとなる本

2018/04/01

「お金2.0」は、メタップス社長の佐藤さんが書いた「新しい経済の仕組み」と「その新しい経済の歩き方」についての本です。

この本を初めて読んだ時、正直言って衝撃を受けました。

メタップスの佐藤さんは1986年生まれで、私と同じミレニアル世代です。同世代の方がこれだけ内容が濃い本を出版していることに、まず驚かされました。

そして肝心の内容ですが、まさしく「これからの新しい時代を生き抜くためのバイブル」になる本だと感じました。

人生の意義や目標を探している人。自分のキャリアに悩んでいる人。新しいサービスを立ち上げようとしている人。

お金2.0は上記のような人にはぜひ読んでもらいたい本です。

以下、お金2.0の重要なポイントのまとめと、最後に自分の感想を書いています。

第1章:お金の正体

経済とは?

  • 「経済システム」とは「生産活動をうまく回す仕組み」。
  • 手軽にネットでサービスを作って世界中の人に使ってもらえるような時代になった今、経済は「読み解く対象」から「創り上げていく対象」に変化している。

発展する経済システムの5つの要素

  • 持続的かつ自動的に発展していく経済システムには5つの共通点がある→(1)インセンティブ、(2)リアルタイム、(3)不確実性、(4)ヒエラルキー、(5)コミュニケーション
  • 1. インセンティブ:参加者に対する報酬(インセンティブ)が明確である。
  • 2. リアルタイム:常に状況が変化するということを、参加者が知っていること(何も変化がないと緊張も努力も必要なくなるため)。
  • 3. 不確実性:運と実力の両方の要素があったほうが(不確実性)、経済システムとしては活気が出る。
  • 4. ヒエラルキー:実際に社会で広く普及した経済システムはヒエラルキーが可視化されている(偏差値、年収、順位など)。
  • 5. コミュニケーション:参加者同士が交流して議論する場が存在することで、1つの共同体であると認識できるようになる。

持続的に成長する組織の条件

  • 1. インセンティブ:承認欲求などのお金以外の欲求に対する報酬も含めて、明確な報酬が用意されていること。
  • 2. リアルタイム:市場が成長しており変化が激しく、予測できないことが日々起こる職場環境。
  • 3. 不確実性:変化が激しく予測が難しい環境が会社に活気を生む。
  • 4. ヒエラルキー:努力の結果で給与や待遇に差が出ること。
  • 5. コミュニケーション:業務を超えて社員同士がコミュニケーションを取れる環境。

 

第2章:テクノロジーが変えるお金のカタチ

今起きているのはあらゆる仕組みの「分散化」

  • お金や経済の世界における大きな変化の流れは「分散化」
  • 既存の経済や社会は「中央集権化」によって秩序を保ってきた。組織の中心に管理者が存在し、そこに情報と権力を集中させることで何か問題が起きてもすぐに対応できる体制が作られた。
  • 現在は全員がスマートフォンを持ち、オンライン上で人と情報とモノが「直接」かつ「常に」繋がっている状態が実現する。そうすると中央に代理人がハブとして介在する必然性がなくなり、全体がバラバラに分散したネットワーク型の社会に変わっていく。
  • 分散化が進むとこれまで力を持っていた中央にいる代理人や仲介者の価値が下がっていき、独自に価値を発揮する経済システムそのものを作れる存在が大きな力を持つようになる。
  • 分散化の流れで生まれた新しい経済システムの具体例→UBERやAirbnbなどの共有経済(シェアリングエコノミー)、Youtuberやインフルエンサーなどが作り出す評価経済、仮想通貨やブロックチェンなどのトークンエコノミー
  • シェアリングエコノミー:Airbnbは不動産を所有してるわけではなく、個人と個人をつなぐネットワークを構築し支払いの仲介やレビューによる信頼性の担保など、よく回る1つの経済システムを作った。
  • 評価経済:他者からの評価によって回る経済のこと。評価経済のネットワーク上では、様々な個人が積極的に情報を発信し、インフルエンサーと呼ばれる人たちが個人の消費に対して大きな影響力を持つ。
  • トークンエコノミー:特定のネットワーク内で流通する独自通貨をトークンとして生産者が発行し、独自に作られた経済圏のこと。国家がやってきたことの縮小版を、トークンを用いて企業や個人が手軽にできる仕組み。
  • トークンには3つの種類がある→(1)通貨型トークン(何かの支払いに使える決済手段としてのトークン)、(2)配当型トークン(特定のサービスや機能で上がった収益の一部をトークン所有者に分配される仕組み)、(3)会員権型トークン(トークン保有者が特別な割引や優待を受けられる仕組み)

「自律分散」という次世代の成功モデル

  • 世の中に膨大なデータが溢れたことで進んでいく「自動化」と、ネットワーク型社会に移行することで起きる「分散化」という2つの大きな流れは、今後の10年を考える上で非常に重要。
  • 自動化と分散化が混ざった時に起こる「自律分散」というコンセプトが、多くの産業のビジネスモデルを覆すことになると予想する。
  • 自律分散とは?:絶対的な支配者や管理者がいるわけでもなく、個々の存在がバラバラに行動しているはずなのに、うまい具合にバランスを取りながら回っているシステムのこと(例:インターネット、ビットコイン)。
  • シェアリングエコノミー、ブロックチェーン、深層学習、IoTなどは一見バラバラな技術トレンドのように見えるが、自律分散型の仕組みを実現するパーツであったことが徐々に明らかになるだろう。

テクノロジーによって経済は「作る」対象に変わった

  • 今はスマホやブロックチェーンなどのテクノロジーを使えば、個人や企業が簡単に通貨を発行して自分なりの経済を作れるようになった。
  • テクノロジーによって「経済の民主化」が進み、万人が経済を自らの手で作れるようになると、「お金そのもの」よりも「どのように経済圏を作って回していくかというノウハウ」の方が重要な時代に変わっていく。

第3章:価値主義とは何か?

お金にはなりにくい「価値」の存在

  • ITは価値のやりとりも電子的にやってくれる技術。お金が価値を媒介する唯一の手段だったが、今後は価値を保存・交換・測定する手段がお金である必要がなくなってくる。
  • つまり、価値を最大化しておけば、色々な方法で好きなタイミングで他の価値と交換できるようになっていく。
  • 例えば、貯金がゼロ円であってもツイッターのフォロワーが100万人以上いれば、何か事業をやりたい時にクラウドファンディングですぐにお金を調達できる。
  • つまり、「他者からの注目」というお金に換算することが難しい価値を、好きなタイミングで人脈・金・情報という別の価値に転換できる。

資本主義から「価値主義」へ

  • 価値主義とは?:今後は、可視化された「資本」ではなく、お金などの資本に変換される前の「価値」を中心とした世界に変わっていく。
  • あらゆる価値を最大化しておけば、その価値をいつでもお金に変換することができる。資本主義においては「資本を最大化すること」が最重要だったが、価値主義においては「価値の最大化」がより重要になる。
  • 価値の3分類:(1)有用性としての価値(役に立つか?という観点から考えた価値)、(2)人間の内面的な価値(愛情・共感・興奮・信頼などの個人の内面にポジティブな効果を及ぼす価値)、(3)社会的な価値(社会全体の持続性を高めるような活動にある価値)
  • ソーシャルキャピタルとは、お金を生み出すわけではないが、社会全体にとって価値のある資本のこと。個人が繋がってできている社会が持続的に良い方向に発展していくために必要な「社会的なネットワーク」を「資産」として捉えている。
  • これからはソーシャルキャピタルを増やすのに長けた人も大きな力を持つようになる。価値主義では、ソーシャルキャピタルの価値を可視化した上で、資本主義とは別のルールで経済を実現することができる。

評価経済とは?

  • 評価経済とは、お金ではなく、他人からの評価や信用などの人間の内面的な感情によって回る経済のこと。インフルエンサーが個人の消費に対して大きな影響力を持つ。
  • 評価経済の拡大の仕方:ソーシャルメディアなどで積極的に情報を発信→ネット上でその情報に共感や好意を感じる人が増える→評価が高まりファンが増える→発信した情報が拡散されやすくなる
  • この活動を通じて蓄積された影響力や認知度や評価は、お金のように色々なものと交換することができる。

「経済」は選べばいい

  • 複数の経済システムは併存する。ネットが発達した現在ではオンライン上に無数のシステムが存在しうるので、1つの枠組みに全員を当てはめる必要がなくなる。
  • 「どれが一番正しいのか?」という考え方ではなく「どれも正しい、人によって正解は違う」という考え方が徐々に受け入れられていく。
  • 私達が何に価値を感じて、どんな資産を蓄え、どんな経済システムの中で生きてくのかも、自分で選んで自分で決められるようになる。
  • 現在の資本主義経済の中ではうまく居場所を作れない人も、全く違うルールで回るオンライン上のトークンエコノミーでは活躍できるかもしれない。もし1つの経済の中で失敗したとしても、いくつもの異なるルールで運営される小さな経済圏があれば、何度もやりなすことができる。

 

第4章:「お金」から開放される生き方

人生の意義を持つことが「価値」になった時代

  • 1980年代以降に生まれたミレニアル世代は、比較的裕福になった後の日本を生きてきた世代なので、お金や出世にモチベーションを感じにくい。
  • 欠落・欲求不満からは人生の意義が生まれなくなったため、あらゆるものが満たされた現在の世界では人生の意義や目的こそが逆に「価値」になりつつある。
  • この流れはさらに加速していき、人間は物質的な充足から精神的な充足を求めることに熱心になっていく。これから誰もが自分の人生の意義や目標を持てることは当然として、それを他人に与えられる存在の価値がどんどん上がっていく。

「儲かること」から「情熱を傾けられること」へ

  • 価値主義の世界では、「好きなことに熱中してる人ほどうまくいきやすい」世の中に変わっていく。
  • 価値の中でもものやサービスなどを消費する使用価値は既に飽和状態にあり、競争が激しい。一方で、人間の内面的な価値に関しては現在の資本主義の枠組みでは認識しにくく、ここに大きなチャンスが存在する。
  • 内面的な価値が経済を動かすようになると、金銭的なリターンを第一に考えるほど儲からなくなり、なにかに熱中している人ほど結果的に利益を得られるようになる。
  • 多くのミレニアル世代が人生の意義を探してる世界では、内面的な欲望を満たす価値を提供できる人が成功する。この世界で活躍するためには、他人に伝えられるほどの熱量を持って取り組めることを探すことが、実は最も近道となる。

「お金」のためではなく「価値」を上げるために働く

  • 価値主義の世界では就職や転職に対する考え方も大きく変わる。この先は「自分の価値を高めておけば何とでもなる」世界が実現しつつある。
  • 従来の働き方では、どの会社が自分のことを最も高く買ってくれるか、どの会社であれば潰れなくて安定していそうかを考えて就職先を選んでいた。
  • 現在は、本当に価値を提供できる人は会社に属して働く必然性が消えてきている。
  • 個人の価値さえ高めておけば、それをお金に変換することもできるし、お金以外の他の価値にも変換できる。ここで言う価値とは、(1)スキル・経験のような実用性としての価値、(2)共感や好意のような内面的な価値、(3)信頼・人脈のような社会的な価値、のいずれも含む。
  • 日々の業務の中でも本当に今の活動が自分の価値の上昇につながっているかを常に自問自答し、それがないのであれば年収が高かったとしても別の道を考えてみることが必要。
  • これからは価値という観点から、自分なりの独自の枠組みを作れるかどうかの競争になっていく。枠組みの中の競争ではなく、枠組みそのものを作る競争。そのためには自分の興味や情熱と向き合い、自らの価値に気づき、それを育てていく。そしてその価値を軸に自分なりの経済圏を作っていく。

 

「お金2.0」のまとめと感想

お金2.0の内容で特に重要だと思ったポイントについてまとめてみました。

お金2.0の中には、「これからの世の中がどのように変わっていくのか」という未来予測に加えて、「新しい世界の中ではどのような生き方が成功しやすいのか」という個人レベルでやるべきことまで書かれています。
 

「安定した大企業に入れば一生安泰」という時代は既に終わりました。

これからの時代は、自分が持つ価値を最大化して、自律的に成長していく独自の経済システムを構築できる人が成功する世の中になっていきます。

価値に関して、資本主義社会では「どんな役に立つのか」という使用価値がメインでした。しかし、これからの価値主義社会では「他の人に共感や感動を与える人間の内面的な価値」「社会全体の持続性に貢献する社会的な価値」の方がより重要になってきます。

そしてこれらの価値を高めるためには、「儲かりそうなこと」を探して注力するよりも、「自分が情熱を傾けられること」に集中する方が近道となります。

自分なりの独自の経済圏を作る際には、(1)インセンティブ、(2)リアルタイム、(3)不確実性、(4)ヒエラルキー、(5)コミュニケーションという5つの要素が重要であるとも書かれていました。
 

この本を読んだ人が今すぐにやるべきことは、「自分が持っている価値の棚卸し」「今やっていることの見直し」、そして「自分の価値ポートフォリオの構築」の3点だと感じました。

まず「自分が持っている価値の棚卸し」では、他の人にはない自分独自のスキルや時間を忘れて熱中できる分野など、自分が持っている価値にどんなものがあるのかを洗い出して考えてみましょう。

そして「今やっていることの見直し」で、会社での業務内容や休日の過ごし方が、「自分の価値の最大化」に貢献しているかどうかを考えます。もし今の仕事内容が価値の最大化につながっていないのであれば、もしかしたらより自分の価値を発揮できる職場への転職を考えたほうがいいかもしれません。

最後に「自分の価値ポートフォリオの構築」として、これから高めていく価値を明確にして、その価値の最大化に集中して行動していくことです。

ここで私が「価値ポートフォリオ」という言葉を使ったのは、必ずしも1つの価値に絞る必要はなく、複数の価値を複数の経済圏で同時に高めていった方がより効率よく自分の価値を高められると思ったからです。
 

人生の意義や目標を探している人。自分のキャリアに悩んでいる人。新しいサービスを立ち上げようとしている人。

上記のような人はぜひお金2.0を読んでみてください。今の状況を打破するヒントが必ず何か得られるはずです。

  • この記事を書いた人

上原@投資家

「株式投資で人生を豊かにする方法」をテーマに情報発信しています。機関投資家の視点で最新のマーケット情報&投資ノウハウをお届け。【経歴】外資系金融で日本株アナリスト→外資系ファンドのファンドマネージャー→ニート【現在の投資先】日本株、米国株、新興国株、エンジェル投資、国内不動産、海外不動産、仮想通貨、NFT。

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