四半期別GDP速報は日本経済の動向を知るための最も基本的な統計です。GDP統計を見る上で知っておくべき基礎知識を3分で分かりやすく解説します。
四半期別GDP速報の概要
- 概要:国民経済計算(GDP統計)のうち、支出系列および雇用者報酬について四半期ごとに公表されるデータ
- ヘッドライン:実質GDPの前期比年率
- 発表:1次速報→2・5・8・11月の15日前後8時50分、2次速報→3・6・9・12月の10日前後8時50分
- 出所:内閣府
- URL:http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html
GDPとは?
GDP(Gross Domestic Product、国内総生産)とは、一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額を表します。
GDPの具体例
GDPを分かりやすく言い換えると、「その国の人が稼いだ金額の総額」となります。
例えば、農家がぶどうを50円で飲料メーカーに販売し、飲料メーカーがぶどうジュースに加工して小売店に150円で販売し、小売店がそのぶどうジュースを消費者に200円で売ったとします。
この場合、それぞれが生み出した付加価値は、
農家:50円
飲料メーカー:100円(卸売価格150円-原材料価格50円)
小売店:50円(小売価格200円-仕入れ価格150円)
となり、生み出された付加価値の合計は200円=50円+100円+50円となります。
実質GDPと名目GDPの違い
GDPには物価変動も含めた名目GDPと、物価変動を除いた実質GDPの2種類があります。
日本の経済成長率をより正確に把握するためには、物価変動による影響を考慮しなくてはいけません。そのため、実質GDPの増減率(季節調整済み前期比、または前期比年率)がヘッドラインとして特に注目されます。
GDPデフレーターとは?
名目GDPを実質GDPで割った値を「GDPデフレーター」と呼び、日本経済全体の物価動向を反映する指標として注目されています。
図:季節調整済み年率換算した四半期GDPの推移
支出面から見たGDP
1次速報で発表されるGDPは支出側から計算されたGDPとなります。
これには民間最終消費支出、民間住宅、民間企業設備、民間在庫品増減、政府採取消費支出、公的固定資本形成、公的在庫品増減、財貨・サービス純輸出が含まれます。
つまり、
GDP=個人消費+住宅投資+設備投資+政府支出+公共投資+在庫増減+輸出-輸入
となります。
これらは、
民需:個人消費、住宅投資、設備投資、在庫増減
公需:政府支出、公共投資、在庫増減
外需:輸出-輸入
という3つに分けることもできます。
速報と確報の違い
GDPは膨大な統計データを用いて推計する加工統計です。「速報性」を高めようとすると利用できる統計データが限られてしまい、「正確性」が犠牲になります。一方で「正確性」を高めようとすると全てのデータが出揃うのを待つ必要があるため、「速報性」が失われます。
GDPでは「速報性」と「正確性」がトレード・オフの関係にあるため、「1次速報→2次速報→確報→確々報」という順番で複数の段階に分けて公表されます。
1次速報
1次速報は「1次QE(quick estimation)」とも呼ばれます。1次速報の段階では利用可能なデータに制限があるため、年次推計で得られた結果を活用しつつ、その時点で利用可能な統計データを基に、約1ヶ月半遅れで発表されます。
1次速報では支出側から算出されたGDPと雇用者報酬について公表されます。
ちなみに、米国のGDPは30日後、イギリスのGDPは25日後に発表されるため、日本のGDPは海外に比べると発表が遅いです。
2次速報
1次速報の約1ヶ月後に、新たに利用可能になった統計データを基に、支出系列のGDPと雇用者報酬の改定が行われます。
確報
毎年12月頃に前年度とその四半期のGDPの確定値が発表されます。
確報では支出側に加えて分配側(すなわち所得側)や生産側から見たGDPの内訳も発表されます。生産、支出、分配のそれぞれから計算されたGDPは等しくなり、これを「GDPの三面等価」と呼びます。