日本の鉱工業生産の2018年2月までの動向をまとめます。短期トレンド、業種別動向、在庫循環図、今後の生産見通し、財別の出荷動向、1979年からの長期トレンドを掲載しています。
日本の鉱工業生産の短期トレンド
1. 鉱工業生産指数の動向(サマリー)
2018年2月の鉱工業生産(季節調整済み)は前月比2.0%増の102.7となりました(確報値)。生産は前月比で増加したものの、1月の大減産の分を取り戻すまでには至りませんでした。
後述の在庫循環図によれば景気はピークに近づきつつあります。しかし、企業の生産計画に基づけば3月以降も増産傾向は続く見込みです。
政府も「生産は緩やかな持ち直し」という基調判断を維持しています。
2. 業種別の生産動向
業種別で見ると、2月は乗用車、自動車部品、電子部品の生産が全体を押し上げました。一方で、半導体・フラットパネル製造装置、ボイラ・原動機、建設用金属製品の生産が減少しました。
3. 在庫循環図
2018年1-2月の生産は前年比1.7%増、2月末の在庫は前年比1.6%増だったので、景気のピーク(下図のオレンジ線)へと近づいています。
※2018年1Qの生産前年比は1-2月の平均値、在庫前年比は2月末の値を使用
在庫循環図とは、生産と在庫の伸び率を比較することで、景気循環の局面を判断する図です。景気は生産と在庫の状況により、以下の4つの局面を循環的に経験します。
(1)意図せざる在庫減局面(景気回復)
景気後退期から徐々に需要が回復し、生産の減少が緩やかになっていきます。生産の増加と貯まっていた在庫の消化で需要の回復に対応していきますが、過剰在庫も徐々に解消し、在庫の減少も緩やかになっていきます。
(2)在庫積み増し局面(景気拡大)
過剰在庫の解消が完了すると、今度は需要の拡大に合わせて生産を増やし、在庫を意図的に積み増すようになります。景気は良い状態ですが、生産前年比=在庫前年比となる直線(上図のオレンジ線)が景気のピークとなって徐々に生産の伸び率が鈍化し始めます。
(3)在庫積み上がり局面(景気減速)
景気がピークを迎え減速局面に入ると、生産しても需要が弱いため在庫が積み上がり、意図せざる在庫の増加が起こります。やがて生産は減少を始め、経済は過剰在庫に苦しむようになります。
(4)在庫調整局面(景気後退)
積み上がった在庫を解消するため、生産の減少が続きます。需要は弱く景気が悪い状態が続いていますが、徐々に在庫が減少し、生産も底をついて次の景気回復局面へと向かいます。
出所:経済産業省
4. 鉱工業生産の予測指数
先行きの生産指数については、3月に前月比+0.9%と小幅に増加した後、4月には+5.2%と大きく増産となる計画です。
はん用・生産用・業務用機械工業、化学工業、金属製品鉱業、紙・パルプ工業、非鉄金属工業
3月生産計画の下落業種
鉄鋼業、輸送機械工業、電子部品・デバイス工業、情報通信機械工業、電気機械工業
はん用・生産用・業務用機械工業、輸送機械工業、情報通信機械工業、電子部品・デバイス工業、電気機械工業、鉄鋼業
4月生産計画の下落業種
紙・パルプ工業、化学工業
5. 財別出荷指数の動向
設備投資の動向と連動する資本財は引き続き上昇トレンドにはあるものの、1月に続いて2ヶ月連続の前月比減少となりました。
鉱工業生産の長期トレンド(キッチンサイクル)
以下は鉱工業生産指数を1979年から長期で見た図表です。
日本の生産は1991年までずっと右肩上がりで成長していきましたが、その後は循環的な上がり下がりを繰り返しながら横ばいで推移しています。
2002年2月から2008年2月までの73ヶ月間は「いざなみ景気」と呼ばれる景気拡大局面が戦後最長となった期間であり、その間は生産も右肩上がりで成長しました。しかしその後はリーマンショックで大きく下落し、現在もリーマンショック前の水準にまでは戻っていません。
キッチンサイクル(3~4年の在庫循環)
在庫循環が要因で起きる3~4年程度の景気循環のことを「キッチンサイクル」と呼びます。
以下のように、鉱工業生産の前年比の谷から谷までを1つのサイクルとして見ると、極端に短く終わっているサイクルを除くとだいたい40ヶ月前後で1つのサイクルとなっています。
鉱工業生産の前回の谷が2016年1月なので、現在のサイクルは既に26ヶ月目ということになります。キッチンサイクルから考えると今回のサイクルは既に後半に差し掛かっており、今後は生産がさらに減速していずれはマイナス転換し、今から約14ヶ月後にはまた生産が底を打つことになります。
鉱工業生産指数の概要
鉱工業生産・出荷・在庫指数の概要
- 概要:鉱工業(製造業と鉱業)の生産・出荷・在庫動向についての統計。
- ヘッドライン:鉱工業生産指数の前月比、先行き2ヶ月分の生産予測指数
- 発表:速報→翌月末の8時50分、確報→翌々月15日の13時30分
- 出所:経済産業省
- URL:http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/index.html
鉱工業生産指数の読み方について基礎的なことは以下の記事でまとめています。以下の記事を呼んでから実際の統計データを見ることで、理解がより深まると思います。