Appleが2017年のiPhoneXから有機ELディスプレイを使い始めてから、有機ELに対する注目が上がってきています。
最近話題の有機ELについて、そもそもどんなものなのか、用途や関連メーカー、今後の見通しについてまとめます。
有機ELとはなんなのか?
簡単にまとめると、有機ELとは有機エレクトロルミネッセンスの略で、有機化合物に電圧をかけるとその有機物が光る現象のことを指します。
1987年に米イーストマン・コダック社の研究者によって発明されました。
有機ELは何に使われるのか?
有機ELの現在の主な用途はスマートフォンとテレビのディスプレイです。サムスンのギャラクシーで有機ELディスプレイが採用されています。
スマホではサムスンや中国メーカーが有機ELディスプレイをスマホに採用して普及が始まり、アップルも2017年のiPhoneXから有機ELディスプレイの採用を始めました。
テレビではLGディスプレイが有機ELテレビの販売で先行しています。
日経新聞の報道(2015年11月19日)によると、パナソニックが2017年度からLGから有機ELパネルを調達し、65インチの大型テレビを富裕層向けに販売開始するみたいです。
その他にもノートPCや車載用途で有機ELディスプレイの採用が見込まれますが、今後5年間の成長ドライバーはスマートフォン、特にアップルとなるでしょう。
ディスプレイ以外にも新たな照明器具として、コニカミノルタが有機EL照明の開発を行っています。
有機EL照明はLED照明や蛍光灯よりも目にやさしく、省電力、軽量化などの特性が優れています。
ただ現時点では、寿命やコストが課題となり、普及拡大には至っていないです。
有機ELディスプレイと液晶ディスプレイの比較
有機ELディスプレイは液晶ディスプレイと比べると、寿命では劣ります。
しかし、省エネ、薄型化(バックライトが必要ないため)、大画面化、視野角で優位性を持っています。
また、基板をプラスチックなどの曲げられる材料に変更すれば、フレキシブルディスプレイも作成できます。
有機ELの製造技術
有機ELの製造技術には、真空蒸着法と印刷技術法の2種類があります。
- 真空蒸着法:真空のチャンバー内で原料化合物を加熱し蒸発させる→真空チャンバー内に置かれた基板の上に化合物が薄く蒸着される。サムスンとLGが採用。すでに実用化済み。
- 印刷技術法:インクジェット技術などの印刷技術を利用し、インク状にした有機EL材料を基板上で薄膜にし素子を作成する技術。実用化が遅れている。
前者の蒸着装置はキヤノンの子会社のキヤノントッキとアルバックが生産しています。
後者の印刷技術法による製造統治は、東京エレクトロンとセイコーエプソンが共同で開発しています。
有機ELディスプレイの普及によってなくなる材料
バックライトがなくなる
まず、有機ELディスプレイではバックライトは使われません。液晶バックライトを製造しているミネベアやオムロンにとってネガティブです。
偏光板の枚数が減る
液晶ディスプレイだと偏光板と透明電極で液晶分子をサンドイッチした構造になっているので、偏光板は2枚使います。
しかし有機ELディスプレイの場合、偏光板は1枚のみ、もしくは使われないみたいです。
そうすると下記のメーカーにはネガティブになる気がします。
- 偏光板:住友化学や日東電工
- 偏光板用の保護フィルムや位相差フィルム:富士フィルム、コニカミノルタ、日本ゼオン、日本触媒、東洋紡
- 偏光板材料のPVAフィルム:クラレ、日本合成化学
(この部分はよくわかりません。数量は減るけど単価は上がるという話もあります。勉強不足です。)
ガラス基板が樹脂基板になる
液晶ディスプレイではガラス基板が使われていますが、フレキシブル有機ELディスプレイでは樹脂基板が使われます。
樹脂基板だとディスプレイを曲げることができるので、デザインの差別化につながります。
樹脂基板の材料としてはPETやポリイミドが使われるようです。
樹脂基板による有機ELディスプレイが普及した場合、旭硝子や日本電気硝子にとってはネガティブです。
ディスプレイメーカーへの影響
有機ELディスプレイの量産は韓国メーカー(LGとサムスン)が先行しており、日系メーカーではジャパンディスプレイが現在開発中という状況です。
ジャパンディスプレイも2018年春からアップル向けに有機ELディスプレイを量産開始するとの報道もあります。
今のところシャープは有機ELの開発を手掛ける余裕がないという状況でしょう。
有機ELディスプレイの今後の動向を注視
有機ELは液晶ディスプレイと比べると目にやさしいので、個人的には早く普及してほしいです。
また、フレキシブルディスプレイが普及すると、スマートフォン以外の様々な分野でも有機ELディスプレイが採用されてくると思います。
しかし、日本企業にとって、有機ELの普及によって恩恵を受ける会社はあまり多くなさそうです。
ディスプレイメーカーはそもそも韓国勢が先行していますし、液晶ディスプレイの材料で強みを持っていたいくつかの日系部材メーカーにとってネガティブな影響を与えそうです。
装置メーカーはキヤノントッキ、アルバック、平田機工、東京エレクトロンなどが恩恵を受けられそうですが、その他はよくわかりません。
まだまだ分からないことだらけなので、今後の動向を注視しながら随時アップデートしていきます。