北米のカジノ用ゲーミング機器市場のシェアと日本企業の動向についてまとめます。日本語ではほとんどない情報なので、けっこうレアなデータだと思います。
日本企業も参入している市場であり、日本でカジノが開業された際にはこれらの企業も恩恵を受けると思います。
北米のカジノ用ゲーミング機器(スロットマシン)の市場シェア
以下のグラフは、米国とカナダにおけるスロットマシンの販売台数シェアです。
米国のIGT (International Game Technology PLC)とSGMS (Scientific Games Corporation)の2社が2強で、オーストラリアのAristocratがシェア3位です。
そして3位に日本のコナミがいます。
図:米国・カナダのスロット売上台数シェア(2016年2Q)
販売台数の推移は以下の通りです。
図:米国・カナダのスロット販売台数の推移
2016年2Qまでなのでちょっと古いデータですが、2014年、2015年と販売台数が減少し、2016年も2Qの時点ではほぼ横ばいだったようです。
設置台数ベースでのカジノ用ゲーミング機器の市場シェアの推移
以下の図はカジノが所有するゲーミング機器の設置台数ベースでの市場シェアの推移です。
図:北米のカジノ所有ゲーミング機器の市場シェア
出所:EILERS-FANTINI Quarterly Slot Survey
大手4社の中ではIGTが徐々にシェアを落とし、コナミがシェアを上げてきているようです。
そして大手4社以外の市場シェアの推移は以下の通りです。
まだ2%程度のシェアですが、大手4社で寡占していた市場に新興メーカーが参入してきているようです。
後ほど詳しく紹介しますが、コナミ以外の日本メーカーも米国のカジノ向けゲーミング機器市場に参入しようとしています。
日本メーカーのカジノ用ゲーミング機器市場での取り組み
カジノ用ゲーミング機器に参入している日本企業はコナミHD(9766)、セガサミーHD(6460)、ピクセルカンパニーズ(2743)、バンダイナムコHD(7832)の4社です。
これらの企業は日本でカジノが開業された場合にゲーミング機器の売上高増加という形で恩恵を受けそうです。
4社の動向についてまとめます。
コナミHD(9766)のカジノ用ゲーミング機器事業
コナミは2000年に米国のネバダ州(ラスベガス)でカジノ用ゲーミング機器の販売ライセンスを獲得してから、北米で徐々にシェアを上げてきています。
現在では以下のように、北米の45の州と地域で販売ライセンスを取得済みです。
カジノ用ゲーミング機器はコナミのゲーミング&システム事業に含まれていますが、当セグメントは連結売上高の12%、営業利益の10%を占めています。売上高は296億円、営業利益44億円で、営業利益率は15%もあります。
コナミはカジノ用ゲーミング機器の販売で他の日本メーカーよりも先行しているため、日本にカジノが開業した時に恩恵を受ける本命銘柄と言えそうです。
セガサミーHD(6460)のカジノ関連事業
セガサミーのカジノ関連ビジネスは2つあります。1つはコナミと同様にカジノ用ゲーミング機器の販売。そしてもう1つが韓国にある統合型リゾート施設(IR)の運営です。
カジノ用ゲーミング機器の販売について、セガサミーは2017年12月に米国ネバダ州における製造と販売のライセンスを取得しました。
セガサミーはアジアではゲーミング機器の販売実績がありましたが、今回のライセンス取得によって世界最大市場の米国に進出することになります。
2019年3月中に米国でゲーミング機器の販売を開始する予定です。
韓国のカジノ運営については、2017年4月に韓国でオープンした北東アジア初の統合型リゾート施設(IR)「パラダイスシティ」にセガサミーは45%出資しています。残りの55%は韓国カジノ大手のパラダイスが出資しています。
パラダイスグループはソウルのウォーカーヒルや釜山、済州でカジノを運営する韓国カジノの最大手です。
パラダイスとセガサミーの合弁会社であるパラダイスセガサミーの売上・利益の推移は以下の通りです(パラダイスセガサミーはセガサミーの持分法適用関連会社)。2017年4月のオープン以降売上高は急拡大していますが、2017年10-12月の時点ではまだ赤字のようです。
セガサミーは日本でカジノが解禁されたときのために、パラダイスシティでカジノ運営のノウハウを蓄積する狙いです。
また、セガサミーは宮崎県のフェニックス・シーガイア・リゾートというリゾート施設を運営しているので、日本においても複合型リゾート施設の運営ノウハウを持っています。
ピクセルカンパニーズ(2743)のカジノ用ゲーミング機器ビジネス
ピクセルカンパニーズはインクジェットカートリッジ等のオフィス用消耗品の販売を主力事業としている会社ですが、この他にも再生可能エネルギー事業(産業用太陽光発電施設等の販売)、フィンテック・IoT事業(金融機関向けシステム開発や仮想通貨マイニング)にも事業を展開しています。
一見、カジノとは関係がなさそうな会社に見えますが、ピクセルカンパニーズは2016年と2017年にマカオの大型国際カジノ見本市にカジノ用ゲーミング機器を出展しています。
こちらがピクセルカンパニーズのカジノ事業参入の第一弾として展示されたカジノ用スロットマシンのRGX1000シリーズです。
その後、2018年3月27日にベトナムのカジノにピクセルカンパニーズのスロットマシンが導入されたとリリースが出ています。
カジノ関連銘柄として注目されるピクセルカンパニーズですが、業績はかなり苦戦しています。特に2017年12月期はカジノ関連事業やフィンテック事業の選考費用により赤字が大きく拡大しています。
図:ピクセルカンパニーズの利益推移
バンダイナムコHD(7832)のカジノ用ゲーミング機器事業
バンダイナムコは2016年9月28日にカジノ用ゲーミング機器市場に参入すると発表しました。オーストラリアのゲーミング機器大手であるアインズワース社(Ainsworth)との業務提携により、ゲーミング機器を共同開発する方針です。
アインズワース社は、北米のカジノが所有するゲーミング機器市場において、設置台数ベースで約2%のシェアを持っています。
バンダイナムコは所有するIPを活用してグラフィックやサウンド、演出などのソフト面を担当し、アインズワース社がゲーミング機器の本体の生産を行うようです。
その後、2017年4月12日にアインズワース社と共同開発したゲーミング機器が発表されました。
バンダイナムコが持つ世界的に有名なパックマンのIPを活用し、北米、南米、豪州で販売していく計画です。
カジノ向けにゲーミング機器を販売するには販売地域でのライセンス取得が必要になりますが、バンダイナムコは自社ではライセンスを取得せずに、アインズワース社との業務提携で今後もカジノ関連事業を進めていくようです。
カジノ関連銘柄!カジノ用ゲーミング機器を販売する日本企業についてまとめ
日本でカジノが開業した場合にカジノ用ゲーミング機器の販売で恩恵を受けそうなのは、コナミHD(9766)、セガサミーHD(6460)、ピクセルカンパニーズ(2743)、バンダイナムコHD(7832)の4社です。
4社の株価や業績データの比較はこちらをご覧ください。
バフェットコードでカジノ用ゲーミング機器の関連銘柄を比較する
コナミはカジノ用ゲーミング機器の米国市場で既に10%以上のシェアを持っているので、ゲーミング機器の販売では一歩リードしている状況です。
セガサミーはゲーミング機器の販売では出遅れていますが、韓国でのカジノを含む統合型リゾート施設(IR)や日本における複合リゾート施設を運営しているノウハウがあるので、日本でカジノが開業された場合にはIRの運営主体として参加できる可能性もありそうです。
ピクセルカンパニーズは韓国とベトナムでゲーミング機器を納入している実績はありますが米国ではライセンスの取得もまだなので、他の会社に比べると出遅れている印象です。
バンダイナムコはゲーミング機器本体への参入ではなく、IPを活用したソフト面での参入です。現在はアインズワース社としか業務提携をしていませんが、自社IPを活用して他のゲーミング機器の会社と業務提携をした場合には、かなり利益率の高いビジネスモデルが出来上がりそうです。