企業分析

【企業分析】キャッシュフロー計算書から会社の状況を読み取る方法

キャッシュフロー計算書の形を見るだけで、その会社がどんなフェーズにあるのか(成長期なのか?成熟期なのか?あるいは衰退企業なのか?)すぐに見分けることができます。

キャッシュフロー計算書の8つのパターンと、日本の企業がそれぞれどんなフェーズにあるのかまとめてみました。

この記事から得られるもの

  • キャッシュフロー計算書のパターンから企業の状況を読み取る方法が分かる!
  • 日本企業が今どんな状況にあるのか、キャッシュフロー計算書から読み取れるようになる!
  • キャッシュフロー計算書の基本的な見方が分かる!

キャッシュフロー計算書の基本的な読み方

まずはキャッシュフロー計算書の読み方について簡単に解説します。

かなり基礎的な内容なので、分かっている人は読み飛ばして次の「キャッシュフロー計算書のパターンから読み取る会社の状況」に移動してください。

営業CF・投資CF・財務CFの意味とは?

キャッシュフロー計算書には営業CF、投資CF、財務CFの3種類のキャッシュフローが記載されています。

営業CFとは、その会社の事業活動による現金の増減です。プラスであれば事業活動がちゃんと現金を生み出していることになりますし、逆にマイナスであれば事業から現金が出て行ってしまっている状態です。

投資CFとは、設備投資や有価証券の購入などの企業の投資活動による現金の増減です。設備投資など積極的に投資を行っている企業であればマイナスになりますが、逆に資産を売却して資金を調達している企業の場合はプラスとなります。

最後に財務CFとは、借金や増資などの財務活動による現金の増減を表しています。借入金を増やしたり増資をして資金を調達しているのであればプラスですし、逆に借金を返済している企業であれば企業から現金が出て行くのでマイナスとなります。

キャッシュフロー計算書における符号の意味は、「企業に現金が入ってくるのであればプラス」になり、逆に「企業から現金が出ていくのであればマイナス」となります。
 

キャッシュフロー計算書のパターンから読み取る会社の状況

営業CF、投資CF、財務CFの数値がプラスなのかマイナスなのかで分類すると、企業のキャッシュフロー計算書は8つのパターンに分かれます。

それぞれのキャッシュフローがなぜプラス(マイナス)になっているのかを考えると、その企業が今どんなフェーズにあるのかが見えてきます。
 

ここからが本記事の本題です。

キャッシュフロー計算書のパターンから企業の状況を読み取る方法について解説します。

また、実際にどんな企業がそれぞれのパターンに当てはまっているのか、スクリーニングツールを使って調べてみました。

優良企業・成長企業(キャッシュフローが健全な企業)

パターン1:優良企業

営業CF 投資CF 財務CF
① 優良企業 黒字 赤字 赤字

営業活動で生み出した現金を投資活動や借金の返済にあてています。営業活動から潤沢なキャッシュフローが生まれている優良企業と言えるでしょう。

バフェットコードのスクリーニングで優良企業を検索してみたところ、全部で2,122社が該当しました。

バフェットコードで「優良企業」を探してみる

優良企業パターンに属する主な企業
トヨタ、ホンダ、NTT、JXTGホールディングス、日立製作所など

パターン2:積極投資企業

営業CF 投資CF 財務CF
② 積極投資企業 黒字 赤字 黒字

営業活動で生み出した現金と借入などで増やした現金を使って、積極的に投資を行っている企業です。営業活動から得られる現金以上に投資を行っており、パターン1の優良企業よりもより積極的に投資を行っている企業と言えるでしょう。

バフェットコードのスクリーニングで積極投資企業を検索してみたところ、全部で681社が該当しました。

バフェットコードで「積極投資企業」を探してみる

積極投資企業パターンに属する主な企業
日産、ソフトバンク、ソニー、イオン、大和ハウス工業、みずほFG、マツダなど

過剰CF企業・債務返済企業/成熟・衰退企業(悪くないが精査が必要な企業)

パターン3:過剰CF企業

営業CF 投資CF 財務CF
③ 過剰CF企業 黒字 黒字 黒字

営業活動で現金を生み出しているだけでなく、借入によっても現金が増えています。さらに、固定資産や有価証券の売却によっても現金を得ています。営業・投資・財務の全てから現金を生み出している状況です。何のために資金を集めているのか精査が必要なキャッシュフローのパターンと言えます。

バフェットコードのスクリーニングで過剰CF企業を検索してみたところ、全部で30社が該当しました。

バフェットコードで「過剰CF企業」を探してみる

過剰CF企業パターンに属する主な企業
ヤフー、日揮、新日本空調、名古屋銀行、徳倉建設など

パターン4:債務返済企業/成熟・衰退企業

営業CF 投資CF 財務CF
④ 債務返済企業/成熟・衰退企業 黒字 黒字 赤字

営業活動と、固定資産や有価証券などの資産売却により現金を生み出し、それを借入金の返済にあてている企業です。投資が行われていないので成長はあまり期待できませんが、財務体質が改善段階にあると言えます。もしくは、成長を目指したくても投資する先がない成熟・衰退企業もこのパターンに当てはまります。

バフェットコードのスクリーニングで債務返済企業/成熟・衰退企業を検索してみたところ、全部で289社が該当しました。

バフェットコードで「債務返済企業/成熟・衰退企業」を探してみる

債務返済企業/成熟・衰退企業パターンに属する主な企業
スズケン、キリンホールディングス、大日本印刷、任天堂、第一三共、りそな、兼松など

リストラ企業・新興企業(微妙なキャッシュロー計算書の企業)

パターン5:リストラ企業

営業CF 投資CF 財務CF
⑤ リストラ企業 赤字 黒字 赤字

営業活動でのマイナスと借入金の返済を補うために、固定資産や有価証券などの資産を売却している企業です。資産売却によって何とか事業を維持している企業になります。

バフェットコードのスクリーニングでリストラ企業を検索してみたところ、全部で92社が該当しました。

バフェットコードで「リストラ企業」を探してみる

リストラ企業パターンに属する主な企業
岡藤ホールディングス、日本郵政、かんぽ生命保険、東洋エンジニアリングなど

パターン6:新興企業

営業CF 投資CF 財務CF
⑥ 新興企業 赤字 赤字 黒字

営業活動では現金を生み出せていないが、将来のために積極的な投資を行っており、その資金を借入や新株の発行でまかなっています。新興企業によくあるパターンですが、本業で稼げていない大企業が将来計画に自信があるのか積極的に資金を調達して投資をしている場合にもキャッシュフロー計算書がこの形になります。

バフェットコードのスクリーニングで新興企業を検索してみたところ、全部で235社が該当しました。

バフェットコードで「新興企業」を探してみる

新興企業パターンに属する主な企業
キャンバス、日鉄住金物産、野村ホールディングス、阪和興業、三菱UFJリース、岡谷鋼機など

危険信号企業・倒産機器企業(危ないキャッシュフロー計算書の企業)

パターン7:危険信号企業

営業CF 投資CF 財務CF
⑦ 危険信号企業 赤字 黒字 黒字

営業活動でのマイナス分を資産売却と借入金などの資金調達でなんとか補っている企業です。資産売却だけがマイナスになっているパターン5のリストラ企業よりもさらに危ない状況です。

バフェットコードのスクリーニングで危険信号企業を検索してみたところ、全部で63社が該当しました。

バフェットコードで「危険信号企業」を探してみる

危険信号企業パターンに属する主な企業
リボミック、大和証券、SBIホールディングス、群馬銀行、サンワテクノスなど

パターン8:倒産危機企業

営業CF 投資CF 財務CF
⑧ 倒産危機企業 赤字 赤字 赤字

全てのキャッシュフローがマイナスになっている最も危ないパターンです。事業活動から現金を生み出せていないにもかかわらず投資を行っており、さらに借入金まで返済しなくてはいけない状態です。過去の事業活動による潤沢な現金がない限り、いずれは倒産してしまうキャッシュフロー計算書の形となります。

バフェットコードのスクリーニングで倒産危機企業を検索してみたところ、全部で110社が該当しました。

バフェットコードで「倒産危機企業」を探してみる

倒産危機企業パターンに属する主な企業
ゆうちょ銀行、三井E&Sホールディングス、日立造船、ゼビオホールディングス、トーメンデバイス、三井海洋開発

 

まとめ

キャッシュフロー計算書のパターンと会社の状況をまとめると以下のようになります。

パターン 営業CF 投資CF 財務CF 主な企業
① 優良企業 黒字 赤字 赤字 トヨタ自動車
② 積極投資企業 黒字 赤字 黒字 日産自動車
③ 過剰CF企業 黒字 黒字 黒字 ヤフー
④ 債務返済企業/成熟・衰退企業 黒字 黒字 赤字 スズケン
⑤ リストラ企業 赤字 黒字 赤字 岡藤ホールディングス
⑥ 新興企業 赤字 赤字 黒字 キャンバス
⑦ 危険信号企業 赤字 黒字 黒字 リボミック
⑧ 倒産危機企業 赤字 赤字 赤字 日立造船
  • この記事を書いた人

上原@投資家

「株式投資で人生を豊かにする方法」をテーマに情報発信しています。機関投資家の視点で最新のマーケット情報&投資ノウハウをお届け。【経歴】外資系金融で日本株アナリスト→外資系ファンドのファンドマネージャー→ニート【現在の投資先】日本株、米国株、新興国株、エンジェル投資、国内不動産、海外不動産、仮想通貨、NFT。

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