PERを使って割安株を探す方法を具体的に解説します




当記事では、PERを使って投資判断をするための具体的な方法を解説していきます。

PERを使った投資法について、インターネット上のどの記事よりも詳しく丁寧に書いたつもりです。PERを使って投資判断をする時のステップは以下のとおりです。

  • ①業績予想をベースにPERを計算する
  • ②適正なPERの水準は?(その1):同業他社や類似企業とPERを比較
  • ③適正なPERの水準は?(その2):その会社の過去のPERの水準と比較
  • ④その会社がなぜ割安・割高になっているのかを考える

それぞれのステップについてできるだけ具体的に、分かりやすく解説していきます。

①業績予想をベースにPERを計算する

PERは「株価÷EPS」というシンプルな硬式で計算できますが、このEPSにはいつの時点の利益を使うべきでしょうか?

候補としては、過去の実績、会社予想、コンセンサス予想、自分の予想などがありますが、私は「投資判断をする時は必ず自分の予想をベースに計算したPERを使うべき」と考えています。

過去の実績をベースにPERを計算しても投資判断には使えない

過去の利益実績やコンセンサス予想をベースに計算したPERを使って投資判断をすると、「割安に見えるけど実は割高」とか「割高に見えるけど実は割安」という罠に引っかかってしまう可能性があります。
 

まずは実績の利益をベースに計算したPERについてですが、株価には過去の業績はすでに織り込まれています。前期にどれだけたくさんの利益を出したとしても、それは既に株価に織り込み済みです。前期実績をベースにPERを算出してそれが割安に見えても、あまり意味がありません。

仮に前期実績ベースでPERが5倍だったとしたら、それは「割安な銘柄」なのではなく「今後利益が下がっていくと市場で評価されてる銘柄」となります。

コンセンサス予想のPERが低くてもそれは「割安」ではなく「適正水準」

コンセンサス予想ベースのPERは、相場の過熱感を知りたい時や自分で予想を作る時間がない時に参考になります。しかし、割安か割高かの投資判断をする時に使うのはあまりお勧めできません。

コンセンサスの利益予想も実績の利益と同様に、基本的には既に株価に織り込み済みです。株価は市場の期待値から形成されますが、コンセンサス予想はまさしくその市場の期待値を表しています(コンセンサスは証券会社のアナリスト予想なので厳密には違うのですが、市場の期待値に最も近い予想だと思います)。

コンセンサス予想も株価に織り込み済みなので、コンセンサス予想ベースのPERが低くて割安に見えても、それはその時点におけるその銘柄の「適正価格」なんです。
 

下の図が表すように、コンセンサスは株価に対する遅行指標です。株価がまずは先行して動いてから、コンセンサスは後を追うように遅行して動く傾向があります。

決算やニュースが出て株価が反応した後にアナリストが予想を修正してコンセンサスが動くので、コンセンサスはどうしても株価に対して遅れて動くことになります。

なので、コンセンサスが上がってから投資をしても、既に株価が上がってしまった後になるのでそこからのアップサイドはあまり期待できません。

コンセンサス予想をベースに計算したPERが割安に見えたとしても、それは「本当に割安」なのではなく、「コンセンサスには織り込まれていないネガティブな材料が既に株価に織り込まれてる」というケースがほとんどです。

コンセンサス予想のPERが低くても、それはその会社に対する市場の評価が反映された「適正水準」なんです。

投資判断に使うPERは自分の利益予想をベースに計算する

過去の実績、会社予想、コンセンサス予想。これらは全て株価には織り込み済みです。これらをベースにPERを計算しても、割安か割高かの判断はできません。

それでは投資判断のためにPERをどう活用すべきかというと、「自分の利益予想をベースに計算したPERを使う」というのが正しい答えだと思っています。

  • 会社予想、コンセンサス予想→全て株価に織り込み済み
  • PERを使って投資判断をする時→自分の予想をベースにするべき

いつ時点の予想を使うべきかはケースバイケースで変わります。

長期投資で考えているなら今期予想よりも2期先や3期先の予想を使ってPERを計算します。短期投資であれば今期予想や場合によっては四半期予想をベースにPERを計算することもあります。

業績の変動が激しいシクリカルな銘柄であれば、株価のピークを予想するために利益が最も拡大する時の予想を使ったり、逆に平準化した利益の予想(数年間の平均利益)をベースにPERを計算することもあります。

投資判断する対象の企業や業界によって、あるいは自分の投資方針によって、PERを計算するベースとなる利益は変わってきます。
 

重要なのは、どの場合であっても自分の利益予想をベースにPERを計算するということです。

自分の予想EPSを使ってPERを計算したら、次はその会社への投資で求める期待リターン(適正なPERの水準)を考えて、今のPERが割高なのか割安なのかを判断します。

適正なPERの水準を考えるためには、「同業他社や類似企業との比較」や「その会社の過去のPERとの比較」を行います。
 

②適正なPERの水準は?(その1):同業他社や類似企業とPERを比較

まずは同業他社や類似企業のPERと比較しながら適正な水準を考えます。

同業他社比較をする際はマネックス証券の銘柄スカウターバフェットコードYahoo!ファイナンスのポートフォリオ機能あたりを使うと便利です。

この時の注意点は、単純に同業他社の平均PERを適正PERとして捉えてはいけないということです。

まったく同じ企業というのは存在しないので、利益成長率やリスクに対する市場の評価は会社によって異なります。

なので、他社との成長率やリスクの違いを考慮しながら適正なPERの水準を考えることになります。

もっと具体的に言うと、以下のような観点で他社と比較しながら、「他社よりも優れていてPERにプレミアムが付与される要因になるのか」あるいは「他社よりも劣っているディスカウント要因になるのか」を考えていきます。

  • 市場の成長率:当該企業の市場の成長率はどれぐらいですか?成長率が今後鈍化する(加速する)可能性はありますか?
  • 参入障壁・ビジネスモデル:当該企業の市場シェアはどれぐらいですか?競合他社の攻勢を防ぐ高い参入障壁やビジネスモデルは構築できていますか?
  • 顧客に対する価格交渉力:顧客との価格交渉で優位な立場に立てますか?突然の値引き要求で収益が悪化するリスクはありませんか?
  • 財務体質:十分な自己資本・現預金はありますか?ネットキャッシュはどれぐらいありますか?
  • 資本政策:配当は十分に支払っていますか?経営陣はROEを高めるつもりはありますか?
  • リスク:利益の変動は大きくありませんか?過去の会社計画・コンセンサスの予想精度はどれぐらいですか?

ドラッグストア業界のバリュエーションを考える

ドラッグストア業界を例に挙げて、適正なPERの水準を考えるためのポイントをいくつか紹介しようと思います。

ウエルシア、ツルハ、サンドラッグ、マツキヨ、コスモス薬品、スギHD、クスリのアオキの業績とバリュエーションを比較したのが以下の表です。

サンドラッグ、マツキヨ、スギホールディングスのPERが低い一方で、ウエルシア、クスリのアオキ、コスモス薬品、ツルハのPERは相対的に高いです。
 

各社の売上高・利益の成長率を見てみましょう(クスリのアオキはまだ上場したばかりなので、ここからはクスリのアオキ以外の会社で比較をします)。

図:ドラッグストア6社の売上高・営業利益の推移

出所:マネックス証券の銘柄スカウター

各社ともに高い成長率で利益を拡大してきたようですが、利益の成長率には以下のように差があります。

2008年度から2017年度にかけての営業利益の変化

  • ウエルシア:5.3倍
  • コスモス薬品:4.2倍
  • ツルハ:3.8倍
  • スギホールディングス:2.1倍
  • サンドラッグ:2.4倍
  • マツモトキヨシ:2.1倍

利益成長率が高い3社(ウエルシア、コスモス薬品、ツルハ)は高いPERで株価が取引されていることが分かります。

市場の成長率は?

まずは市場の成長率についてですが、ドラッグストア業界はM&Aや新規出店の拡大により大手企業による寡占化が進んできました。しかしコンビニ業界などに比べるとまだ寡占度は低いので、市場の成長はまだ続きそうです。

市場の成長率が今後も高いままなのであれば、ドラッグストア業界全体の高PERはまだ維持されそうです。しかし、例えばコンビニとの競争激化や出店余地の限界などが起きると、市場全体の成長期待が低くなり、今のPERの水準は保てなくなるでしょう。

ウエルシアとツルハの成長余地はまだある?

ウエルシアとツルハはドラッグストアの中でも特に成長率が高いですが、両社は積極的なM&Aによる店舗拡大で売上高を伸ばしてきました。

ウエルシアは展開する地域が関東、中部、関西、東北と分散しているので、これらの地域でまだ出店を拡大する余地があるかどうかがバリュエーションに影響してきます。

また、ウエルシアの攻勢が他の企業の成長率にどの程度影響を与えるか(例えば関東ではウエルシアとマツキヨが競合、東北ではウエルシアとツルハが競合)もチェックする必要があるでしょう。

ツルハは北海道・東北・中国・四国地方で高いシェアを持っています。これらの地域での出店拡大余地がPERに大きく影響します。これらの地域で「もうこれ以上は無理」というレベルまで市場シェアが上がってしまうと、何か新しい成長戦略を示せない限りはツルハのPERは低下してしまうでしょう。

コスモス薬品は独自路線で成長

コスモス薬品は他のドラッグストアとは戦略がやや異なります。ウエルシアやツルハ、マツモトキヨシが力を入れている調剤には参入しておらず、食品や消耗品の低価格販売に注力しています。ドラッグストアというよりも、ディスカウントストアという特色が強いです。

食品はこれまでドラッグストア業界にとって成長分野でした。コスモス薬品の適正なPERを考える上では、今後も食品カテゴリーの成長が続くのかどうかが重要なポイントになります。

財務体質と資本政策

財務体質はウエルシアとクスリのアオキだけネットキャッシュではありませんが、自己資本比率は十分なのでPERのディスカウント要因にはならなそうです。

ROEを比較すると、マツモトキヨシとスギホールディングスが相対的に低く、PERの格差にもつながっているようです。なので、両社が配当の拡大やキャッシュの有効活用などのROE拡大施策をとってくるかどうかは今後のバリュエーションに大きく影響を与えそうです。

もし具体的なROE向上施策を打ってきそうなのであれば、適正なPERの水準は今よりも高いところにあるかもしれません。
 

上記で上げた考察はあくまでも一例です。

様々な側面から企業を比較して、
「なぜこの会社のPERは高いのか?」
「この会社はこれからどんなことをしてきそうか?」

と考え抜くことで、適正なPERの水準が見えてきます。
 

③適正なPERの水準は?(その2):過去のPERの水準と比較

続いて、当該企業の過去のPERの水準との比較を行いましょう。

過去のPERの水準はマネックス証券の銘柄スカウターバフェットコードから見ることができます。

ここでの注意点は、単純に過去の平均PERと比較して割安か割高かを判断してはいけないということです。

必ず、
「なぜ過去のあの時のPERは高く(低く)評価されていたのか?」
「なぜ今のPERはこの水準で評価されているのか?」

ということを考えてください。

同じ会社であっても市場からの評価は時によって変わります。過去の時点と今の時点では市場からの評価も違うので、PERの水準も当然変わります。

その会社に対する過去の市場からの評価と今の会社の実態を比べながら、適正なPERの水準はどれぐらいなのかを考えましょう。
 

④その会社がなぜ割安・割高になっているのかを考える

同業他社との比較でも過去の水準との比較でも、大事なのは「なぜ今の株価はそのPERで評価されているのか?同業他社や過去とは何が違うのか?」と考え抜くことです。

PERは市場からの評価を写した鏡なので、株価がそのPERで評価されている裏には必ず何か理由があります。その理由をつきとめて、それが一時的なものなのか、あるいは今後も続くものなのかを考えると、適正なPERの水準が見えてきます。

日頃からPERを通じて株価を見る習慣をつけると、会社を見る目が養われます。

PERにプレミアムがつく理由、ディスカウントされる理由は突き詰めれば全て「利益の成長率」と「リスク」に集約されるんですが、その要因は会社によって様々です。

たくさんの会社のバリュエーションを分析することで自分の中でケースが積みあがっていって、新しい会社を分析する時も「何を見るべきか」「なぜPERが高い・低いのか」といったセンスが磨かれていきます。
 

PERの知識を学んでも株で勝てるようになるわけではない

ここまでPERを使った投資法を解説してきて身もふたもないことを言いますが、PERとかバリュエーションについて正しい知識を学んでも、それだけで株式投資で勝てるようになるとは限りません。

ファンダメンタル重視の長期投資で勝つためには、バリュエーション以外にも経営分析や財務分析、未来予測力、マネジメントの能力を見極める能力などなど、様々なスキルが必要です。

バリュエーションの知識はあくまでも「株式投資で勝つために必要な1つのスキル」にすぎません。場合によっては他のスキルの方が重要かもしれません。
 

しかしそれでも、PERに対する正しい知識を持つことは、株式投資をやる上で十分に価値があると思っています。

PERに対する正しい理解があれば、見た目は安くても実際にはまったく安くない株を避けることができたり、PERが高くて買えないと思っていた銘柄でも実は割安だったということに気付けたりします。

また、PERを通じてマーケットを分析することで、株式投資や会計のセンスも養うことができると思います。

ファンダメンタル重視の長期投資家にとって、バリュエーション理論への正しい理解は勝つための必要な重要なスキルだと思います。
 

PERの使い方を徹底解説した「バリュエーション講座」の目次

PERの基礎と本質:「PERが低い=割安」と勘違いしてませんか?

PERを使って割安株を探す方法を具体的に解説します

PERで投資判断を決める時に注意すべきこと

PERのケーススタディ:なぜあの業界のPERは高いのか?

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