バリュエーションは将来予想をベースに計算してこそ意味がある

前回の記事ではバリュエーション指標の基礎として、PERやPBRの意味と簡単な使い方について紹介しました。

今回は、PER等を計算するときの注意事項として、「将来予想をベースに計算する」ということについて解説します。

過去の業績は全て株価に織り込まれており、PERに高いも低いもない

過去に起こった出来事というのは、基本的に全て株価に織り込まれています。

ということは、過去の利益をもとに計算したPERに高いも低いもなく、株価が割安か割高かのは判断できません。

過去の利益は全て株価に織り込まれているので、それをもとに計算したPERが仮に高かったとしてもそれは適正価格です。

過去の利益水準をもとに、株価が割高か割安かを議論することにあまり意味はありません。
 

株価は、会社に対する市場からの将来期待を織り込む

株価というのは、将来に対する市場からの期待を織り込みます。

利益が伸びると期待されている企業は、実際に高い利益成長を決算で発表するよりも前に株価は上がります。

逆に利益が減っていくと予想されている企業の株価は、だんだんと下がっていくことになります。

投資家がその企業に対してどういう期待を持っているかで、PERの水準も変わります。

今年、来年、再来年と高い成長が期待されている企業は、今年の予想EPS(1株当たり純利益)をベースに計算された予想PERの水準も高くなります。

例えば、産業として既に成熟した自動車産業のPERはあまり高くありませんが、GoogleやFacebookに代表される次世代のインターネット企業は高い成長が期待されているため、PERが高くなる傾向があります。
 

PERは将来予想をベースに計算しなければ意味がない

最初に説明した通り、過去の実績はすでに株価に織り込まれているので、実績EPSをもとにPERを計算しても意味はありません。

将来の予想EPSをもとにPERを計算して、同業他社や過去の水準と比較してこそ意味があります。

いつの時点の予想EPSを使うべきかは、市場がどれぐらいの時間軸でその企業の成長を見ているか、ということに依存します。

今期の予想PERでは割高に見えても、それは市場が5年後の姿に期待しているからで、5年後のEPSをベースにPERを計算すると別に割高ではない、と言えるかもしれません。
 

(1)過去の水準、(2)同業他社、(3)理論的な水準、と比較する

予想ベースでバリュエーション指標を計算したら、次は割安か割高かを判断するために、以下の3つの比較を行います。

1つ目は、過去の水準との比較です。

過去にその企業がどれぐらいのバリュエーションの水準で取引されていたかを調べて、今のバリュエーションが割高か割安なのかを判断します。
 

2つ目は、同業他社との比較です。

財務体質や会計基準、収益性などが異なるので単純な横比較ができるわけではありません。

しかし同業他社の水準と比較することで、投資対象が市場でどのような評価をされているのかが分かります。
 

3つ目が、理論的にあるべき水準と比較することです。

詳細は次回以降の記事で説明しますが、PERにもPBRにも理論値が存在します。
具体的には、
理論PER=(ROE-成長率)÷{ROE×(株主資本コスト-成長率)}
理論PBR=(ROE-成長率)÷(株主資本コスト-成長率)
となります。
この理論的な水準と比較することで、株価の割安感を測ります。
 

余談:市場予想をもとに計算されたPERに、割高も割安もない

ここから先は余談です。

少し複雑な話になりますし、議論の余地もあると思うので、バリュエーションについて掘り下げて考えたい人だけ読んでください。

市場が企業に期待していることは、既に株価に織り込まれています。

厳密には期待の100%が織り込まれているというより、期待値の分だけ既に株価に織り込まれているというイメージです。

例えば市場が「これから100%起きる」と期待している事象は、既に100%が株価に織り込まれており、その事象が起きたとしても株価は動きません。

一方で、市場が「60%の確率で起きるだろう」と期待している事象は、60%が株価に織り込まれており、実際にその事象が起きると残りの40%の分が株価に反映されます。
 

市場の利益予想の期待値として、コンセンサスというものがあります。

コンセンサスとはアナリスト予想の平均値で、証券口座や会社四季報などで見ることができます。
 

コンセンサスは市場の期待値なので、既に株価に織り込まれていることになります。

つまり、コンセンサス通りの決算であれば、どんなに高い増益率だったとしても決算発表の後に株価は動きません。高い増益率は既に株価に織り込まれていたからです。

コンセンサスを上回るポジティブサプライズの決算や、逆に下回るネガティブサプライズの決算だと、株価は決算発表の後に動きます。
 

つまり何が言いたいかというと、市場の期待値は既に株価に織り込まれているので、コンセンサスをベースに計算したバリュエーションに割安も割高もないということです。

(ここに議論の余地があります。株価は毎日のように動いており、必ずしも適正なバリュエーションで取引されているとは限りません。あるべきバリュエーションの水準というのは理論的に存在し、仮にコンセンサス通りの利益が出たとしても理論的な水準に株価が収斂していくとも考えられます。市場は必ずしも効率的ではない、ということです。)

あなたがどう思っているかが重要で、自分の予想利益をもとに計算したバリュエーション指標を、同業他社や過去の水準と比較することに意味があります。

ということは結局、市場予想を上回る利益を自分が予想するなら「買い」、逆ならば「売り」というシンプルな結論になります。
 

まとめ

最後に簡単なまとめです。

  • 過去の実績は全て株価に織り込まれているので、実績ベースのバリュエーションに意味はない
  • 市場の期待値も既に株価に織り込まれているので、コンセンサスベースのバリュエーションで割安かどうかは測れない(議論の余地あり)
  • 自分の予想利益をもとに計算したバリュエーション指標を、過去の水準や同業他社と比べることに意味がある
  • けっきょく、コンセンサスを上回る利益を予想するなら「買い」、逆なら「売り」

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