バリュエーション指標の使い方:基礎中の基礎編

株価が割安か割高を測るための指標として、アナリストはPBRやPERといったバリュエーション指標を使います。

バリュエーション指標にはいろいろな種類がありますが、それぞれの定義や簡単な使い方を基礎編としてご紹介します。

「応用編」では各指標の理論的にあるべき水準なども踏まえて(理論PBRや理論PERなど)、バリュエーションについてもう少し踏み込んだ議論をします。

主なバリュエーション指標の定義と意味

指標として使われる頻度の多い順に定義と意味を説明します。

PER(株価収益率)
=時価総額÷当期純利益=株価÷1株当たり純利益

PERは1株当たりの純利益(EPS)に対して今の株価が何倍なのかを表します。成長が高く期待されている企業ほど、高いPERとなる傾向があります。

PERには、「投資の回収期間」という意味合いもあります。例えばPERが20倍というのは、今の時価総額が純利益20年分に相当するということです。純利益は株主に帰属する利益なので、純利益が今後も横ばいと仮定すると、投資金額(時価総額)を20年かけて回収することになります。

PERが高いというのは投資の回収に時間がかかる、つまり今の株価が割高とみなされ、逆にPERが低いと割安だとみなされます。

※株式益利回り
PERの逆数をとると、株式益利回りになります。例えばPERが20倍の会社の株価収益率は1÷20で5.0%です。これは株主から見た投資の収益率が5.0%であるということを意味します。

PBR(株価純資産倍率)
=時価総額÷純資産=株価÷1株当たり純資産

PBRは1株当たり純資産(BPS)に対して今の株価が何倍なのかを表します。

純資産は企業の会計上の解散価値を表します。解散価値とは、企業を解散して持っている資産を売り、借金等を全て返して、最終的に株主に残る金額を意味します。PBRはその解散価値に対して株価が何倍の水準で取引されているかを表しているので、PERと同様に高いと割高、低いと割安だとみなされます。

よく「PBRが1倍以下というのは今の株価が解散価値を下回っているということだから、割安だ」という声を聞きます。しかし、これは明確に間違いです。

詳しくは応用編の記事で書きますが、PBRは理論的にはROEと相関します。ROEがマイナスもしくは著しく低く、将来的に純資産が毀損する可能性がある場合は、PBRが1倍を切っていてもおかしくはありません。

EV/EBITDA倍率=企業価値(EV)÷EBITDA
※注
EV=時価総額+総有利子負債-現預金
EBITDA=営業利益+減価償却費
日本の会計基準におけるEBITDAは「経常利益+支払利息-受取配当金+減価償却費」の方がより正確ですが、簡易的に「営業利益+減価償却費」で計算することが多いです。

企業価値とは、株主から見た会社の価値である時価総額と、債権者から見た会社の価値である純有利子負債(総有利子負債-現預金)を足したものです。

そしてEBITDAとは、事業活動から得られるキャッシュフローに近い意味を持ちます(キャッシュアウトを伴わない費用である減価償却費を営業利益に足し戻しているので)。

すなわちEV/EBITDA倍率とは、時価で評価した企業の価値が、事業キャッシュフローの何倍なのかを表します。

EV/EBITDA倍率はPERやPBRに比べると計算が複雑ですが、主に次の3つのメリットがあります。

(1)会計方針の影響を受けにくいので、日本と海外の企業のバリュエーションを比較するときに使えます。

(2)積極的な投資を行って利益が圧迫されている企業(減価償却費が増えるため)はPERが高くなりがちです。しかし、EV/EBITDA倍率だと積極投資を行っている企業とそうでない企業も平等に比較できます。

(3)PERもPBRも財務体質の影響を受けてしまいます。具体的には、負債比率の高い企業ほどPERもPBRも高くなる傾向にあります。しかしEV/EBITDA倍率の水準は負債比率の影響を受けないので、財務体質の異なる企業同士の比較に使える指標です。

配当利回り=1株当たり配当金÷株価
例えば、1年間の配当金が1株当たり20円で今の株価が1,000円の場合、配当利回りは20円÷1,000円で2.0%となります。配当利回りが2%の企業の株式を100万円分持っていると、100万円×2%=2万円を配当として毎年もらえることになります。

配当は必ずしも高ければいいとは限りません。なぜならば、成長力の高い会社はお金を配当に回すよりも投資に回してもらった方が、「純利益の拡大→株価の上昇」という形で株主の利益が増えるからです。

しかし一般的には、配当利回りが高いほど今の株価は割安だとみなされます。

PCFR(株価キャッシュフロー倍率)
=時価総額÷キャッシュフロー=株価÷1株当たりキャッシュフロー

※キャッシュフロー=当期純利益+減価償却費

PCFRは1株当たりキャッシュフローに対して今の株価が何倍なのかを表します。PERに似ている指標ですが、減価償却費を当期純利益に足し戻すことで、積極的な投資のせいで利益が圧迫している企業も平等に評価することができます。

EV/EBITDA倍率と同様に、株価の国際比較や積極的な投資を行っている企業とそうでない企業を比較するときに使われるバリュエーション指標です。

PSR(株価売上高倍率)
=時価総額÷売上高=株価÷1株当たり売上高

PSRは1株当たり売上高に対して今の株価が何倍なのかを表します。新興成長企業のように今は利益が出ていなくてPERが異常値となっていても、売上高と株価を比較することで割安か割高かを判断することができます。

また、リーマンショックの時のように大企業でも赤字になってしまった時にもPSRは使われます。

 

バリュエーション指標はどこで見ることができるのか?

Yahoo!ファイナンスの各企業のページで、会社予想ベースのPERと配当利回り、実績ベースのPBRを見ることができます。

例えば、下記のトヨタ自動車のページの真ん中あたりに、参考指標として書くバリュエーション指標が掲載されています。
トヨタ自動車(7203.T)

Yahoo!ファイナンスでは国内市場のPER、PBR、配当利回りのランキングも見ることができます。
低PERランキング
低PBRランキング
配当利回りランキング

国内市場の平均的なバリュエーションの水準を知りたい場合、日本経済新聞社のページで見ることができます。
日本経済新聞社:国内の株式指標

 
基礎中の基礎編では、バリュエーション指標の定義と意味について紹介しました。
次回以降の記事で、実際にどのように各指標を使うのか具体的に説明していきます。

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