PERの目安

株価の割安感を判定するPERの目安とは?

当記事では、株価の割安感を判断するためのPERの目安について解説します。

PERには「〇〇倍以下だったら割安だ」と言える明確な基準はありません。単純にPERが低ければ割安だから買い、高ければ割高と判断できるものでもなく、目安となるPERの水準は企業や業界によって異なるのが現実です。

慣れないと使いこなすのは難しいですが、PERの目安を持って適正な株価水準を意識できるようになると、割高な株を高値づかみしてしまうリスクが減りますし、株を買う時の根拠と自信へと繋がります。

PERの計算式と意味」の記事でPERの基本的な知識について解説したので、当記事ではそこから発展してPERの目安の考え方について4つのポイントを紹介します。

PERの基礎知識:似ている会社のPERは近くなる

PERの目安について詳しく解説する前に、まずはPERを使う上で覚えておいてほしい大前提となる知識を簡単にまとめます。

PERには「特性が似た企業は近い水準になる」という性質があります。企業の特性とはつまり、成長率やリスク、財務体質のことです。

PERは「企業の価値」を表す値札みたいなものなので、似たような会社であれば同じような値段になる(近いPERになる)のは当たり前といえば当たり前です

もし成長率や財務体質が似ている企業Aと企業Bがあったら、両社のPERは近い水準で落ち着きます。同じ業界にいる企業のPERが似たような水準になるのも、この性質があるからです。

また、企業の特性が過去から大きく変わらない限り、一時的にPERが大きく変化してもいずれは過去平均に回帰しようとする力が働きます。企業の特性が昔と今で同じであれば「企業の価値」も変わらないはずだからです。

PERの性質
 

この性質を利用して、対象企業と特性が似た同業他社のPERや、対象企業の過去のPERの水準を目安にすることで、株価が割安かどうかを判断できるようになります。

ここからはPERの目安の考え方について、具体的な方法を4つご紹介します。
 

PERの目安を考える4つの方法

PERの目安を考える方法について、まずは①市場平均との比較、②業種平均との比較、③同業他社との比較の3つを解説します。

「市場平均との比較」が最も簡単ですが、すごく大雑把な基準となります。「市場平均との比較」→「業種平均との比較」→「同業他社との比較」とPERの目安の精度が上がっていくイメージを持っています。
 

PERの目安の考え方①:市場平均と比較する

まずはかなり大雑把な方法になりますが、日本に上場している企業の平均PER(日経平均やTOPIXの平均PER)を目安にして、割安か割高かを判断します。

日経平均のPERは、こちらのサイトで過去の推移を見ることができます。

日経平均のPERの推移

コロナ影響で利益が落ち込んだため足元ではPERが異常に高い値になっていますが、過去平均はだいたい15倍ぐらいです。個別企業への投資を考える時も「日本市場の平均PER 15倍」が1つの目安になると思います。

日本の平均的な企業だとPERが15倍ぐらいになるという目安を持っておいて、平均よりも成長率が高い、あるいは利益が安定している企業であればPERが15倍よりも高くなるべきですし、逆に成長率が低かったりリスクが高い企業であれば、PERが15倍以下であっても割安ではないと判断できます。
 

もし予想利益をベースに計算されたPERの推移が見たければ、以下のサイトが参考になります。ただ、実績ベースのPERと予想ベースのPERのどちらであっても「15倍が目安になる」という結論に変わりはありません。

参考サイト


 

ちなみに、現時点での実績ベースのPERと予想ベースのPERの一覧が見たければ日経新聞のサイトが便利です。

国内市場の平均PER
 

米国株の市場平均PERを調べる

米国株のPERはこちらのサイトで1870年代からの超長期でデータを見ることができます。100念以上の超長期の平均で見ると、米国株の平均PERは14~15倍程度です。

米国株S&P500のPER
 

米国株の予想PERの推移は以下の通りです。日本株と同じく長期の過去平均は15倍程度ですが、2014年以降の平均値だと18倍程度なので、現在の米国株では18倍が目安として使えそうです。

米国株(S&P500)の予想PERの推移

上の予想PERのグラフは以下のサイトで見ることができます。出所はどちらもYardeni Researchです。

参考サイト


 

PERの目安の考え方②:業種平均と比較する

まずは市場平均を目安として使う方法を紹介しましたが、実際のPERは業種ごとに水準が大きく異なります。成長率が高くて人気がある業種のPERは高くなりますが、利益成長が見込めない不人気な業種のPERは低くなりがちです。

市場平均だと目安として使うにはさすがに大雑把すぎるので、業種別の平均PERを目安に使うことで、対象企業に似ている企業に絞って比較できるようになります。

ここからは、業種別のPERが見れるサイトを3つ紹介したいと思います。
 

業種別PERが見れるサイト① Investing.com

1つ目はInvesting.comというサイトです。例えばトヨタのページに行って「会計報告→指標」という順番でタブをクリックしてみて下さい。
Investing.comでPERを見る

すると以下のように、会社の数値と産業平均の数値が横並びで表示されます。
トヨタのPERを業種平均と比較

一番上に表示されている「P/E比率(PER)」を見てみると、産業平均が9.24倍なのに対してトヨタは12.87倍なので、トヨタの株式は業種平均よりも高く評価されていることが分かります。

株価指標に限らず、利益率や財務体質などいろんな指標で産業平均と比較することができるので便利です。
 

業種別PERが見れるサイト② モーニングスター

次に、モーニングスターの業種別データのページを見てみましょう。

以下のようにPER、PBR、配当利回りのデータが業種別にまとまっています。業種名のリンクをクリックすると過去数か月分のデータも見ることができます。
モーニングスターの業種別バリュエーション

Investing.comのサイトは実績PERでしたが、モーニングスターは予想PERが表示されているので、個別企業の会社予想やコンセンサス予想をベースに計算されたPERと比較することができます。
 

業種別PERが見れるサイト③ Yardeni Research

Investing.comとモーニングスターでは「業種平均PERの現在の値」を知ることはできますが、「過去のトレンド」までは見れません。

そんな時に便利なのがYardeni Researchです。

このサイトは本当に便利でして、「こんなデータあったらいいのになぁ」と思うデータはだいたいあります。英語のサイトでデータを探しにくいという欠点はありますが、データ量が豊富でとても便利なサイトです。

Yardeni Researchのサイト内にあるPDFファイルで、以下のように業種別PERのトレンドを2006年から見ることができます。
日本のセクター別PERの推移

業種の分け方が東証33業種ではなくMSCIの業種分類になるので、モーニングスターのデータと単純に比較する事はできません。ですが、業種別にPERの目安を考えるならこのサイトが一番便利だと思います。日本株と米国株の業種別PERが見れるファイルへのリンクを下に載せておきます。

参考サイト


 

PERの目安の考え方③:同業他社の平均と比較する

業種平均PERを使えば業種ごとの特性の違いを考慮することができますが、例えば東証のサービス業という業種には数百社の会社が含まれているので、比較対象として適切かと聞かれるとちょっと怪しくなります。

「ビジネスモデルや利益成長率が似ている会社を自分で選んで比較したい!」という方は、バフェット・コードの企業比較の機能が便利です。

自分で好きな企業を選んで、以下のように様々な指標で比較できます。もちろんPERも比較する指標として選ぶことができますし、選んだ企業の平均値も自動で計算してくれます。
バフェットコードで同業他社と株価指標を比較


 

比較する同業他社の選び方

比較する同業他社は自分の知識をもとに選んでもいいですが、最初はどこを選べばいいのかよく分からないと思います。そんな方におすすめなのが会社四季報の「比較会社」の欄です。

これは東洋経済の記者が各企業に「御社と比較するならどこの会社が適切ですか?」と取材をしてまとめたものなので、比較企業として信頼できるものだと思います。

会社四季報は紙の冊子を自分で買ってもいいですが、マネックス証券のように口座を持っていると無料で読める証券会社も多いです。まずは自分の証券口座で四季報が読めるかどうかを確認してみて下さい。

この他にも、業界地図で類似企業を探す、バフェットコードで表示される類似企業を採用する、「〇〇(製品名) 市場シェア」でグーグル検索する、株探みん株で同じテーマの企業を探す、といった方法で同業他社を選ぶと良いと思います。
 

PERの目安の考え方④:対象企業の過去平均と比較する

PERの目安を考える4つ目の方法は「対象企業の過去のPERの水準と比較すること」です。

ここまでは「同業他社であればPERは近い水準になるはず」という考えのもとでPERの目安を考えてきましたが、4つ目の方法では「同じ会社であれば過去も今も特性はあまり変わらないだろう」という考えがベースになります。

マネックス証券の銘柄スカウターバフェットコードiMarketTradingviewといったサイトでPERの過去トレンドを見ることができます。

例えば以下のグラフは、iMarketで表示したトヨタのPERの推移です。
iMarketで表示されるトヨタ自動車のPER

企業の成長率やリスクの大きさが過去と変わっていないのであれば、PERは過去の平均並みの水準に回帰するだろうと考えます。ですが、成長率が過去から変化しているのであれば、単純に過去平均を目安として考えるのではなく、現在の企業の実力を加味した調整は必要になります。

例えば、トヨタ自動車のPERの過去平均は2014年以降だと10倍程度です。ですが昔と比べると世界の自動車普及率が上昇して市場の成長率は鈍化していますし、現在はテスラのような電気自動車メーカーとの競争も激化しています。

このような市場の変化を考慮すると、もしかしたらトヨタの適正なPERの水準は単純に過去平均の10倍を使うよりも、それよりももう少し低い水準を使うべきという結論になるかもしれません。

「今のPERは過去平均よりも低いから割安だ」とすぐに結論を出すのではなく、現在の成長率やリスクの大きさが過去と比べてどう変化したのかを考えた上で適正なPERの水準を決めなくてはいけません。
 

PERを使う時に覚えておくべき大事な話

ここまで、適正なPERの目安を考える方法として、①市場平均と比較する方法、②産業別平均と比較する方法、③同業他社と比較する方法、④対象企業の過去水準と比較する方法の4つを紹介してきました。

最後に、PERを使う時の注意点を解説します。とても重要な話で、ここのパートを読まずにPERを使っても失敗すると思います。
 

PERが低い企業には必ず何かしらの理由がある

PERを使って株価が割安かどうかを判断する時は、同業他社や対象企業の過去の水準と比較して目安を考えるのが基本です。ただここで注意してもらいたいのは、同業他社といっても実力がまったく同じ会社は存在しませんし、過去と現在で中身が変わらない会社もありません。

似たような会社のPERは近い水準になりますが、たとえ同じビジネスをやっている会社であっても、実力が違えばPERの水準も変わります。

要するに、PERが低い企業には株価が売られる何かしらの理由が必ずあるはずで、何の理由もなく割安に放置されている企業はほとんどありません。

株式市場には頭の良いたくさんの投資家が参加しているので、そんな企業があったらすぐ皆に買われてしまい、PERは適正な水準まで上がります。

PERが低い企業には低くなってしかるべき理由が必ず何かしらあるので、その理由を無視して「同業他社(過去水準)よりも割安だから買いだ」と判断しても、うまくいくかどうかは丁半博打です。
 

その会社が割安/割高になっている理由を考え抜く

なのでPERを使って投資をする時は「なぜ今の株価はそのPERで評価されているのか?同業他社や過去とは何が違うのか?」と考えることが大事です。

いろんな企業のPERを見て、高い理由・低い理由をひたすら考えてみて下さい。PERを通じて株価を見るようになると、企業を見る目、株価を見る目が養われます。そして、市場がどんなことを考えているのか、市場が何を期待しているのかを読み取れるようになります。

PERの水準は基本的には利益の成長率とリスクの大きさによって決まるので、PERが高い企業は成長率が高いか、リスクが低いと市場から思われています。逆にPERが低い企業は成長率が低い、あるいはリスクが高いとみなされていることになります。

PERが低くなっている理由を探し、その理由は間違っていていずれは株価が再評価されるのか、あるいは正しい理由なので今のPERがその企業の適正な評価なのかを考えます。

PERと株価の動きから市場が考えていることが分かれば、市場の思惑が正しいのか間違っているのか自分なりに判断できるようになります。
 

市場コンセンサスの間違いを発見する洞察力を身につける

ここまで説明してきたように、単純に「PERが低いから割安で買い」と考えるのではなく、もう一歩踏み込んで「市場は〇〇と考えているからPERは低くなっているが、その市場の思惑は間違っていていずれは再評価されるはず」という思考ができるようになると、投資家としての実力が一弾上がると思います。

賢明な投資家は大衆と同じ行動を取りません。市場のコンセンサスを疑い、適切な分析と根拠に基づいた自分の信念に従って行動します。

市場の評価が間違っている企業(不当にPERが低くなっている企業)を見つけることができれば、自分の見積もりの正しさが証明される過程で企業が市場から再評価され、PERの上昇とともに株価も上昇するはずです。

PERの知識を学んだだけでは株で勝てるようにはなりません。

株で勝つために大事なのは、PERを通じていろんな企業を見て市場の期待値を探り、間違った期待値が形成されている場所を探し出すことだと思います。

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  • この記事を書いた人

上原@外銀→投資家

元外銀勤務。現在は外資系の金融機関で日本株のファンドマネージャー。30代で資産10億を目指して、日本株、米国株、新興国株、海外不動産、仮想通貨に投資をしています。

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