日本の鉱工業生産を読むための基礎知識を3分で分かりやすく解説します。鉱工業生産が読めるようになると、業種別の景況感が分かるだけでなく、在庫循環図から景気循環の動向まで把握できるようになります。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の概要
- 概要:鉱工業(製造業と鉱業)の生産・出荷・在庫動向についての統計。
- ヘッドライン:鉱工業生産指数の前月比、先行き2ヶ月分の生産予測指数
- 発表:速報→翌月末の8時50分、確報→翌々月15日の13時30分
- 出所:経済産業省
- URL:http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/index.html
鉱工業指数とは?
日本の鉱工業(製造業と工業)の生産・出荷・在庫の動向を知ることができる統計です(価格変動の影響は覗かれた数量指数です)。
日本のGDPに占める鉱工業の割合は約18%。関連産業まで含めると約40%です。
景気変動の大きな要因となる設備投資や在庫循環を把握することができるので、GDPに次ぐレベルで注目度が高い統計です。
また、翌月末にはデータが公表されるので、速報性の高さも鉱工業指数の特徴の1つです。
鉱工業生産指数の注目ポイント
鉱工業指数の統計では、生産指数、出荷指数、在庫指数、在庫率指数(=在庫/出荷)、生産予測指数、稼働率指数、生産能力指数などが公表されます。
その中でも特に注目されているデータが、(1)生産指数、(2)業種別の生産動向、(3)在庫循環の状況、(4)生産予測指数、(5)出荷指数の5点です。
(1)生産指数
鉱工業生産指数は、日本の鉱工業の生産活動の動向を表しています。487種類の製品品目の生産数量を指数化し、それぞれの品目の付加価値額に応じて重み付けし、最終的な総合指数を算出しています。
季節調整済み生産指数の前月比がヘッドラインとして注目されます。
図:鉱工業指数の計算方法(出所:経済産業省)
(2)業種別の生産動向
全体の指数だけでなく以下のような業種別の生産動向も知ることができます。
(3)在庫循環の状況
生産指数(または出荷指数)と在庫指数の前年比伸び率をそれぞれ横軸、縦軸にした在庫循環図を見ることで、景気循環の動向を把握し、今後の生産見通しを予測することができます。
まず、需要が好調になると在庫が一時的に減少します。次に、企業が先行きの需要拡大を見込んで在庫を積み増すと、生産活動は加速して増加します。徐々に需要が伸び悩むようになると在庫が積み上がっていき、今後は企業は過剰在庫の削減のために生産を減らすようになります。
このように在庫の状況は、「(1)意図せざる在庫減局面→(2)在庫積み増し局面→(3)在庫積み上がり局面→(4)在庫調整局面」の4つの局面を循環します。現在の局面を在庫循環図から知ることで、今後の生産についてもある程度予測できるようになります。
特に、IT関連財の在庫循環は景気に先行性があるとして、「電子部品・デバイス工業」や「民生用電子機械」などの在庫循環図が注目されています。
(4)生産予測指数
企業の生産計画を基にした、先行き2ヵ月の生産を予測する指数も発表されます(予測指数は速報でのみ公表)。
生産予測指数の中の「予測修正率(前月の翌月見込みがどれだけ修正されたか)」も重要な情報です。生産減が予測されている場合、予測修正率を見ることで「予定通りの生産減」なのか「意図せざる生産減」なのかを知ることができます。
ちなみに、鉱工業生産指数の採用品目は487品目です。一方で予測指数は、製造工業における主要195品目について主要企業にアンケートを行う形で集計されています。
また、生産予測指数は強気な水準で発表される傾向があり、実現率(前月調査の当月見込みがどれだけ実現したか)と予測修正率はマイナスになることが多いです。
(5)出荷指数
鉱工業製品の工場からの出荷状況を示す指数で、需要動向を把握するために利用します。
特に、「資本財(輸送機械を除く)」の出荷指数は設備投資の動向を知ることができるので注目度が高いです。