日銀短観(2018年3月調査)の内容をまとめます。3月調査の結果は製造業・非製造業ともに業況が悪化しました。素材産業の悪化が目立つ一方で、設備投資関連の業種は引き続き好調です。国内の需給はバブル期並みのひっ迫した状況が続いています。
日銀短観(2018年3月調査)のポイント
- 大企業の業況判断DIは製造業・非製造業共に悪化、先行き判断DIも悪化見込み
- 製造業の業況判断DIで大きく悪化しているのは化学、鉄鋼、非鉄金属、金属製品等の素材産業
- 一方で生産用機械やはん用機械などの設備投資関連の業種は業況判断DIが改善
- 非製造業の業況判断DIでは、物品賃貸、電機・ガス、卸売の業況が悪化
- 非製造業の先行き判断DIでは、対事業所サービスや不動産、建設などのこれまで好調だった内需関連の業種が悪化
- 大企業・全産業の設備投資計画は前期比+2.3%となり、期初計画としては過去5年間で最も高い数値
- 国内の需給判断DIはゼロとなり、需給はひっ迫している状況
大企業の業況判断DI
3月の日銀短観によると、大企業の業況判断DIは製造業が24(12月調査は26)、非製造業が23(12月調査は25)となり、それぞれ悪化しました。
先行き判断DIに関しても、製造業・非製造業ともに20となり、3月調査から悪化する見込みとなっています。
注:当記事の全図表における直近データは先行き判断DI
企業の業況全般について「(1)良い、(2)さほど良くない、(3)悪い」の3つの選択肢でアンケートを行います。そして、アンケート結果の「良い」の回答比率から「悪い」の回答比率を引いたものが業界判断DIです。すべての企業が「良い」と答えれば100、「悪い」と答えれば-100となります。「良い」と「悪い」の回答者数が半々になった場合はゼロとなるので、ここが景気の善し悪しを判断する境目となります。
詳細はこちら→3分で分かる!日銀短観を読むための基礎知識
大企業・製造業の業況判断DI(業種別)
製造業の業況判断DIを見てみると、前回調査比で大きく悪化しているのは化学、鉄鋼、非鉄金属、金属製品となっており、素材産業の業況が特に悪化しています。資源価格の上昇によるコスト増が素材産業の見通しを悪化させているものと思われます。
一方で生産用機械やはん用機械などの設備投資関連の業種は業況判断DIが改善しています。
大企業・非製造業の業況判断DI(業種別)
非製造業の業況判断DIを見てみると、物品賃貸、電機・ガス、卸売などで業況が悪化しています。
先行き判断DIでは、電機・ガスが引き続き悪化する見込みであることに加えて、対事業所サービスや不動産、建設などのこれまで好調だった内需関連の業種で悪化が見込まれています。
設備投資・経常利益の計画(大企業・全業種)
設備投資計画(前年比)の変化
大企業・全産業の設備投資計画(土地含む、ソフトウェア除く)は前期比+2.3%となり、期初計画としては過去5年間で最も高い数値となりました。
経常利益計画(前年比)の変化
18年度の大企業・全産業の経常利益計画は前期比▲2.2%の減益スタートとなりました。18年度のドル円相場の想定は109.66円となり、17年度の110.67円から若干の円高となる前提です。
大企業・製造業の需給と価格
国内需給
3月調査における国内の需給判断DIはゼロとなり、需給はひっ迫している状況です。現在の需給ひっ迫はバブル期以来の水準となっています。
ただし、足元の業況悪化を受けて、先行き判断DIは▲2に需給が悪化する見込みです。
販売価格と仕入価格
日銀短観の長期動向(業況、需給、価格)
日銀短観の1974年からの長期動向をまとめておきます。
大企業の業況判断DI(長期動向)
大企業・製造業の需給と価格(長期動向)
日銀短観の概要
最後に、簡単に日銀短観という統計の概要をまとめておきます。
日銀短観の概要
- 概要:日銀が1万社を超える企業に対して行うアンケート調査で、現在の景況感や今後の景気見通しを知ることができる
- ヘッドライン:大企業の業況判断DI(Diffusion Index)
- 発表:4月・7月・10月の初旬、12月の中旬(8時50分)
- 出所:日本銀行
- URL:https://www.boj.or.jp/statistics/tk/index.htm/
日銀短観の読み方について詳細は以下の記事でまとめています。以下の記事を呼んでから実際の統計データを見ることで、理解がより深まると思います。