アメリカの自動車市場について、最近の需要動向と中長期的な市場見通しについて考えてみました。今は安定している自動車市場ですが、中長期的には潜在需要を押し下げるいくつかの要因がすでに見え始めています。
米国の自動車市場は2017年に8年ぶりに縮小
アメリカの自動車販売台数は、2017年に8年ぶりの減少となりました。Marklinesのページによると、2017年の自動車販売台数は前年比1.8%減の1,723万台になったようです。
出所:Marklines
図:アメリカの自動車販売の推移(月次)
出所:TRADING ECONOMICS.COM, AUTODATA CORPORATION
アメリカの自動車市場が2017年に縮小した理由
アメリカの自動車販売が減少したのは、いくつか理由があります。
- 金融危機以降に金融機関は積極的に自動車ローンの貸出を拡大してきたが、2015年前後にはローン残高が金融危機前の水準まで回復した
- 自動車ローンの長期延滞率が上昇し、金融機関はサブプライム層向けを中心に貸出を抑制している
- FRBの利上げに伴って貸出金利が上昇し、消費者が自動車ローンを組みにくくなった
- 金融危機以降に自動車のリース販売が拡大したが、平均3年と言われるリース期間を終えたリース落ち車両が中古車市場に流れてきた(自動車のリース販売はリース期間後に下取りされる)
今後のアメリカ自動車市場の見通し
アメリカは今でも人口が増加しているので、世帯数の増加に伴い潜在需要は今後も緩やかに拡大が見込まれます。
しかし一方でアメリカも人口の高齢化が進んでおり、65歳以上の人口比率がだんだんと増加しています。65歳以上の人たちは自動車の保有比率が全国平均よりも低いので、人口の高齢化は中長期的に潜在需要の押し下げ要因になります。
また、アメリカでも他の国と同様に都市化が進んでいるため(人口が都市部に集中すること)、マイカーを保有する必要性が徐々に低下しています。同様に、若者の車離れも長期的な需要押し下げ要因になりえます。
さらに、最近ではカーシェアのようなサービスも増えてきているため、「自動車を保有する意味」がますます失われてきています。
アメリカの自動車市場についてまとめ
アメリカは景気が良いので、足元では自動車市場も安定して推移しています。
しかし長期的には、(1)人口の高齢化、(2)都市部への人口集中、(3)若者の車離れ、(4)カーシェアの普及、といった要因が潜在需要を押し下げる可能性があります。
自動車メーカーも今は問題なくとも、自動車の販売台数に依存しない新しいビジネスモデルを構築しないと、もしかしたら30年後には大きく衰退してしまうかもしれません。