株式投資

ValuationMatrix (バリュエーションマトリックス)で効率的な財務分析を!

2018/07/28

ValuationMatrixという企業分析サイトをご存知ですか?

ValuationMatrixとは、企業業績をグラフ化したり、類似企業と比較したりして企業分析の手間を省いてくれる便利な企業分析ツールです。しかも無料登録で誰でもすぐに使えます。

ValuationMatrixでできることと基本的な使い方について解説します。

ValuationMatrixではどんな企業分析ができる?

ValuationMatrixは、企業の長期業績のグラフ化やDCF法のシミュレーションができる多機能な企業分析サイトです。有料プランもありますが、無料でも十分な機能を使うことができます。

他にもおすすめな企業分析ツールがあります
無料で使える企業分析ツールはValuationMatrix以外にもいくつかあります。個人的にはマネックス証券のツールが高機能でおすすめです。
 

マネックス証券の企業分析ツールは無料なのに高機能で超オススメ
 

最強の企業分析ツール「バフェット・コード」の基本的な使い方

 

ValuationMatrixについての詳細な解説に移る前に、まずはValuationMatrixでできることと欠点についてまとめておきます。

ValuationMatrixでは以下のような企業分析を無料で行うことができます。

ValuationMatrixでできる企業分析

  • 長期業績のグラフ化:売上高、営業利益、キャッシュフローなどの指標を自由に選んでグラフ化することができる。しかも20年の長期データがあり、類似企業との比較もできる。
  • ROICツリーグラフ:ROICを利益率や資産回転率に分解したグラフが表示されているので、当該企業のバリュードライバーを把握することができる。
  • DCFシミュレーション:成長率や利益率などのパラメータをいじってDCF法による理論株価を算出できる。
  • スクリーニング:PERやPBRなどの6つの指標で条件を設定して株式をスクリーニングできる。
  • 米国企業の分析:ValuationMatrixには日本企業だけでなく米国に上場している企業のデータも含まれている。

 

一方で、ValuationMatrixにもいくつか欠点はあります。

ValuationMatrixの欠点

  • データ更新が遅い:2018年7月時点でまだ2018年3月期の業績データが更新されていない。
  • 業績の数値データは見れない:様々な指標をグラフ化できるので便利だが、売上や利益などの実際の数値データを見ることはできない。
  • スクリーニングの検索条件は6つしかない:PERなどの代表的な6つの指標しかないので、自分のオリジナルアイデアでスクリーニングできない。

 

以上がValuationMatrixでできること・できないことのまとめです。

20年という長期データのグラフ化は非常に便利なんですが、データ更新が遅いのと、グラフがあまり綺麗ではないのが残念なところです。

ただ、企業の長期業績を把握したいときや、DCF法のシミュレーションを使ってどれぐらいの利益成長が株価に織り込まれているかを把握したいときには、便利な企業分析サイトだと思います。

続いて、ValuationMatrixのそれぞれの機能について細かく解説してきます。
 

ValuationMatrixでできる企業分析

使い方が難しいサイトではないので、わざわざ以下の説明を読まなくても直感的に使うことはできると思います。

ValuationMatrixの検索窓で企業名や銘柄コードで検索すると、以下のような個別企業のページに移動します。

ソニー(6758)の場合

個別企業のページで以下で詳しく説明する業績のグラフ化やDCFシミュレーションを行うことができます。

20年分の長期財務データをグラフ化して見ることができる

損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書の主要指標について、最大20年分をグラフ化して見ることができます。

損益計算書のグラフでは、表示する項目を売上高、営業利益、当期純利益、売上原価、販管費、EBITDAの中から2つ選ぶことができます。

 

キャッシュフロー計算書のグラフでは、キャッシュフローのパターンをもとにその企業が過去にどのような局面(低迷期や安定期など)を経てきたのか一発で分かるようになっています。

ROICツリーで過去のバリュードライバーを把握する

ROICとはReturn on Invested Capitalの略で、日本語では投下資本利益率と訳します。企業が投下した資本(株主資本+有利子負債)に対してどれだけのリターン(税引き後営業利益)を生み出しているかを測る指標です。

ROIC = 税引き後営業利益÷投下資本 =税引き後営業利益÷(株主資本+有利子負債)

ROICの式は営業利益率や資産回転率に分解することができます。細かく分解していくと、何がドライバーとなってその企業のリターンが生み出されていたのか(あるいはリターンが毀損されたのか)が分かります。

ValuationMatrixではROICを分解して得られる各指標が過去どのように推移してきたのか(何がROICのドライバーとなったのか)がグラフ化されています。

分析コメントで企業分析のポイントを把握する

貸借対照表やROICツリーの各グラフの下には、分析コメントが自動で書き出されています。企業の財務指標が市場平均などと比較して大きくずれている場合、それを自動でコメントしてくれているようです。

自動コメントなので本格的な分析とは言えませんが、当該企業の業績推移についてポイントをま止めてくれています。

分析コメントの例(ソニーの場合)
この3年間、積極的に将来のためにお金を使って(投資を行って)きましたが、その成果が表れてきたためか、事業での稼ぎの額が投資額を上回りました。「稼ぎ時に突入した」、と言えるかもしれません。

現在のバリュエーションをグラフでチェックする

営業利益倍率(企業価値÷営業利益)、PER、CF倍率(時価総額÷FCF)、PBRの5つの指標をグラフ上で確認できます。

単純に数値としてバリュエーション指標が掲載されているのではなく、下の図のようにバランスシートや利益の大きさと企業価値を比較したグラフが表示されています。当該企業の株価が現在の利益や株主資本に対してどれぐらいの水準で評価されているのかが視覚的に分かります。

DCF法のシミュレーションで企業価値をざっくり計算する

将来の売上成長率や営業利益率などのパラメーターをいじると、DCF法により企業価値を算出してくれます。各パラメーターをいじりながら、理論価値と現在の株価と比較することができます。

ざっくりとしたDCF法なのでこれをそのまま投資に使うことはできませんが、今の株価に織り込まれている成長率や利益率のイメージをつかむことができます。

自由自在グラフで好きな指標、企業をグラフ化して比較できる

自由自在グラフ(β)では、自分の好きな指標、企業を選んでグラフで比較することができます。表示する指標は財務指標からバリュエーション指標まで基本的なものはそろっていますし、自分で計算式を入力して新しい指標を作成することも可能です。

 

株式スクリーニング:6つの指標から割安企業を探す

「良い株検索」という名前のスクリーニングツールでは、PBR、PER、売上高成長率、営業利益成長率、ROIC、自己資本比率という6つの項目でスクリーニングを行うことができます。

さらに、設定したスクリーニング条件で検索された企業に過去1年投資を行った場合の平均リターンまで計算してくれるので、簡単なバックテストまでできてしまいます。

 

ValuationMatrixのすごいところ

ValuationMatrixの便利な点は、個別企業のページで20年分の業績をグラフ化できる点ですね。自由自在グラフ(β)を使えば、自分の好きな指標をグラフ化したり、気になっている企業同士を比較することもできます。

しかも日本企業だけでなく、米国の企業の業績まで見ることができます。

また、株式スクリーニングで設定した条件で投資をした場合のバックテストができるのも、他のツールにはないValuationMatrixの特徴ですね。
 

ValuationMatrixの残念なところ

一番残念なのが、グラフ化できる業績のデータ更新が2016年で止まってしまっていることです(2018年7月現在)。12月決算の企業は2017年度の業績がもう更新されているので、3月決算の日本企業もいずれ更新はされるのでしょうが、既に7月なので更新スピードはあまり早くないようです。

また、以下のようにグラフの見栄えもあまり綺麗ではありません。

機能面では他の企業分析サイトよりも優れているだけに、データの更新頻度とグラフの見栄えが非常に残念です。
 

また、スクリーニングでは検索条件に成長率やPERなどを設定できますが、これがいつの時点のデータを参照しているのかがよく分かりません。個別企業のデータ更新が2016年までになっているところを見ると、2016年実績をもとに計算したPERや成長率で検索しているのでしょうか。。。

だとしたらスクリーニングツールとしては全く使えないものになってしまいます。
 

もう1つ加えると、これは残念というよりは注意点になりますが、ValuationMatrixが算出している割安か割高かの判断は簡易的なDCF法に基づいたものなので、これを使って実際に投資をするのはやめておいた方がいいと思います。

こんな簡単なバリュエーションで利益がでるほど、株式投資は甘いものではありません。
 

企業分析サイト「ValuationMatrix」についてまとめ

ValuationMatrixは、

  • 長期の業績データをグラフ化して見ることができる
  • 自分の好きな指標と企業を選んで比較するグラフを簡単に作ることができる
  • 簡易的なDCF法のシミュレーションができる
  • スクリーニング結果のバックテストができる

という点が特徴的な企業分析サイトです。

機能面では他の企業分析サイトよりも優れていると思います。

しかし一方で、データ更新が遅いので最新の業績データを見ることができません。その結果、バリュエーションやスクリーニングツールがまったく使えなくなってしまっています。

機能的には無料でもかなり便利なものがそろっているだけに、データの更新頻度とグラフの見栄えの悪さが非常に残念です。

今後の改善に期待です。
 

マネックス証券の企業分析ツールは高機能で超オススメ

無料で使える企業分析ツールとしては、マネックス証券がかなりおすすめだと思っています。

口座を開設しないといけない手間はありますが、長期業績のグラフ、スクリーニングツール、決算スケジュール、ヒストリカルバリュエーションのチャートや市場コンセンサスの推移など、かなり高機能なツールを全て無料で使えます。

企業分性や銘柄選びの効率が上がること間違いなしですので、マネックス証券は口座を持っておいて損はないと思います。

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無料の企業分析ツール「バフェット・コード」は登録の手間いらずで高機能

口座を作るのはめんどくさい!という方にはバフェット・コードという企業分析ツールがおすすめです。

ValuationMatrixと比べるとグラフの自由度が低く表示できる業績の期間も短いという欠点はあるのですが、掲載されてるデータが豊富で、スクリーニングや企業比較の機能がかなり優れています。

企業分析の効率化をしたい方にはバフェット・コードもおすすめです。

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  • この記事を書いた人

上原@投資家

「株式投資で人生を豊かにする方法」をテーマに情報発信しています。機関投資家の視点で最新のマーケット情報&投資ノウハウをお届け。【経歴】外資系金融で日本株アナリスト→外資系ファンドのファンドマネージャー→ニート【現在の投資先】日本株、米国株、新興国株、エンジェル投資、国内不動産、海外不動産、仮想通貨、NFT。

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