【書評】「ダンドーのバリュー投資」の内容まとめ

本日は低リスク・高リターンの銘柄を発見してバリュー株投資を実践する方法が書かれている「ダンドーのバリュー投資」という本の内容を簡単にまとめて解説します。

「ダンドーのバリュー投資」の著者であるモニッシュ・パブライ氏はパブライ・インベストマネジメント・ファンドというヘッジファンドを運営しており、常に全米の上位1%に入るような成績を上げている超優秀なファンドマネージャーです。

最初、「ダンドーのバリュー投資」というタイトルを見た時は「ダンドー」という人のバリュー株投資手法を書いた本なのかと思ったんですが、ダンドーというのは直訳すると「富を想像する努力と挑戦」という意味なんだそうです。とても良い言葉ですね。

本書の中では、バフェットやマンガーといった著名なバリュー株投資家の手法と、アメリカに住むパテルというインド系アメリカ人の集団が実践する低リスク・高リターンを生み出すビジネスアプローチを組み合わせて、個人投資家でも実践できるようなバリュー株投資のフレームワークが紹介されています。

当記事ではそのフレームワークの中身と、特に重要だと思われるポイントをまとめました。

ほとんどの投資家は、高い利益率を得るためには大きなリスクをとらなければならないと言われてきたのではないだろうか。本書で紹介する「ダンドー手法」とは、バフェットたちが成功した手法からさらに一歩進めて、リスクを最小化しながら、リターンを最大化するという革新的な方法である。

ダンドーのバリュー株投資フレームワーク

最初から結論を書いてしましますが、以下の9つのポイントがダンドーのバリュー株投資を実践するための最も重要なフレームワークとなります。

ダンドーのバリュー株投資フレームワーク
  1. 既存ビジネスの購入に絞る
  2. 変化が大変緩やかな業界のシンプルなビジネスを購入する
  3. 行き詰った業界の、行き詰ったビジネスを購入する
  4. 競争上の優位性を保てるビジネスを購入するー堀
  5. オッズがあなたにとって圧倒的に有利なときには大きく賭ける
  6. 裁定取引に注目する
  7. 潜在的な本質価値よりも大幅に割り引かれた価格でビジネスを購入する
  8. 低リスクで不確実性の高いビジネスを探すべきである
  9. 革新者になるよりも成功者に倣った方が良い

①既存ビジネスの購入に絞る

これは⑨の「革新者になるよりも成功者に倣った方が良い」とも少し似ているんですが、要するに新規事業を立ち上げるよりもすでに長い歴史がある分析可能なビジネスを購入した方が良いということです。

また、この章では株式投資のメリットについても解説されています。

新しくビジネスを立ち上げで自分で経営をするのは簡単なことではありませんし、まとまった資金も必要になります。しかし株式投資であれば、すでに運営されているビジネスを小額から保有することができます。たいした努力もせずに、自分が選んだ企業の利益の一部を得ることができるんです。

②変化が大変緩やかな業界のシンプルなビジネスを購入する

バリュー株投資とは企業の本質価値を知り、それよりも安い価格で株を買うことです。企業の市場価格(株価)と本質価値の間にあるギャップを発見し、そのギャップが自分たちにとって有利なら株を購入します。

企業の本質価値とは、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引くことで決定されます。しかし、企業の将来のキャッシュフローが自分が予想した金額よりも小さくなるのであれば、本質価値よりも低い価格で投資をしたつもりでも実はそうではなかったということになりかねません。

これを防ぐための方法は、将来のキャッシュフローの保守的な予想が簡単に見通せるシンプルなビジネスにだけ投資をするということです。

株を購入した後は常に心理的な戦いをすることになります。そしてこの巨大な力と戦うための最も強力な武器が、シンプルな論点に基づいたシンプルなビジネスを購入することです。著者のパブライ氏は常に投資の論点を書き出すことにしており、それが短い段落以上になるなら何か根本的な問題があると考えるようです。

③行き詰まった業界の、行き詰まったビジネスを購入する

市場はほとんどのケースで効率的なので、株価と本質価値のギャップを探そうと分析しても無駄に終わることが多いです。

しかし市場は人間の心理の影響を受けるので、完全に効率的ではありません。この「ほとんどのケースで効率的」というのと「完全に効率的ではない」という差はとても大きくて、価格と本質価値の間にギャップがある効率的ではないわずかなケースを見つけ出して投資をすることで投資家は利益を得ることができます。

それではどんな時に効率的ではなくなるのかというと、人の心理は極端な恐怖心と強欲の間で揺れ動くので、市場全体が極度に何かを恐れている時は株価が本質価値を下回っている可能性があります。

なので「行き詰まった業界の、行き詰まったビジネスを購入する」ことが投資の利益につながるんです。

投資を行う最適なタイミングは、短期的な見通しが暗く、そのビジネスが市場で受け入れられずに嫌われている時です。そのような状況だと、本質的な価値よりも割り引かれた価格で買える可能性が高くなります。

④競争上の優位性を保てるビジネスを購入するー堀

「堀」という言葉はバリュー株投資の本にはよく出てくる言葉で、僕がおススメしている「千年投資の公理」にも「堀」という言葉が出てきます。

堀というのは企業の利益を守る競争優位性のことです。その企業が堀を持っているかどうかは財務諸表を見れば分かります。堀を持った良いビジネスは、投下資本に対するリターンが高くなるからです。

バリュー投資における堀の重要性は、次のバフェットの名言がよく表しています。

投資のカギは、その産業が社会にどれだけ影響を与えるか、あるいはどれだけ成長するのかを評価することよりもむしろ、対象企業の競走上の優位性と、何よりもその優位性が持続するかどうかを見極めることにある。製品やサービスの周りに広くて長持ちする堀があるものこそが、投資家に利益をもたらしてくれるのである。

⑤オッズがあなたにとって圧倒的に有利なときには大きく賭ける

これはすごいシンプルですね。普段は小さく賭けつつ、自信のある投資アイデア(株価が保守的な予想に基づいても十分に割安で、対象企業に持続性のある堀があるケース)の場合は大きく賭けをします。

バークシャー・ハサウェイでのバフェットのパートナーであるマンガーはこう言っています。

賢い者は、これぞというチャンスに巡り合ったときに大きく賭ける。勝算があるときに大きな賭けをするのである。それ以外のときは賭けない。単純なことなのだ。

⑥裁定取引に注目する

裁定取引の本来の定義は同一の価値を持つ商品の一時的な価格差を利用して利益を出す取引です。

ただしここでは、企業がビジネスを行うときの競争上の堀の1つとして裁定取引に注目しています。高いリスクを取っているビジネスを選ぶのではなく、「コインの表なら勝ち、裏でも負けは小さい!」となるどちらに転んでも大きな失敗にはならないビジネスに注目しましょうというのがこの章のトピックです。

⑦潜在的な本質価値よりも大幅に割り引かれた価格でビジネスを購入する

ここでは「安全域(margin of safety)」という言葉がよく使われます。本質的な価値よりも十分に割安な、不測の事態が起きても損失が少なくなるような価格で株を買いましょう、というのがここでのポイントです。

安全域というのは古くはバフェットの師であるベンジャミン・グレアムが「賢明なる投資家」の中で使い始めた言葉です。賢明なる投資家は全てのバリュー株投資の本の基礎となっている本で、しかもKindle Unlimitedで無料で読むことができます。

バフェットが師と仰ぎ尊敬したグレアムが残した「バリュー投資」の最高傑作!株式と債券の配分方法、だれも気づいていない将来伸びる「魅力のない二流企業株」や「割安株」の見つけ方を伝授。

 

この「安全域を持って投資をする」というのが本書のテーマでもある「低リスク・高リターンを生み出す投資」の秘訣であり、「本質価値に対して割安度が大きいほど、リスクは低くなる一方でリターンは高くなる」というのが重要なポイントです。

一般的に高いリターンと高いリスクはセットのように考えられますが、ダンドーのバリュー投資では「常にリスクを最小化すること」「リスクが低いほど、報酬は大きい」という考え方に常にこだわっています。

そして十分に割安な価格で株を買うためには、瞬間的な暴落を辛抱強く待つことが必要です。

「③行き詰まった業界の、行き詰まったビジネスを購入する」のところでも説明しましたが、市場で悲観論が強まった時に人間の心理は極端に恐怖の方に傾き、市場での合理性が失われて株価は本質価値よりも割安な価格まで下がります。

ここでも「勝算があるときに大きな賭けをする」ということが重要になります。

⑧低リスクで不確実性の高いビジネスを探すべきである

リスクと不確実性には次の4つの組み合わせがあります。

  • 高リスク、低い不確実性
  • 高リスク、高い不確実性
  • 低リスク、低い不確実性
  • 低リスク、高い不確実性

このうち「低リスク、低い不確実性」は市場で特に人気となるため、PERが高くなる傾向があります。そしてダンドーのバリュー投資ではこのタイプの企業に投資するのは避けた方が良いと言っています。

ダンドー手法で推奨されているのは「低リスク、高い不確実性」です。ビジネスのリスクは低いので失敗しても損は小さい一方で、不確実性が高まって将来に対して悲観的になった時、株価は暴落して本質価値よりも安くなります。

⑨革新者になるよりも成功者に倣った方が良い

例えば著者が投資対象としてグーグルとマイクロソフトのどちらかを選ばなくてはいけないとしたら、絶対にマイクロソフトを選ぶとのこと。

グーグルのように革新的で前例がないものを作り出そうとする企業よりも、明確なターゲットがあり他の成功者をマネしようとする企業を選ぶということです。技術革新は運まかせになりますが、成功者の真似は確実という考えです。

他者のアイデアを繰り返し模倣し、拡大する能力を実証している人によって経営されている企業を常に探すべきと本書では言っています。

事実、著者のパブライ氏が運営しているヘッジファンドは、バフェットの運用手法やパートナーへの報酬体系を模倣して成功を収めています。

まとめ

ダンドーのバリュー投資に書かれている「シンプルで、競争上の優位性を保てるビジネスを購入する」「本質価値よりも十分に割安な価格で購入する」といった内容は他のバリュー株投資本にも多く書かれていることで、目新しさはありません。

しかしこの本で何度も繰り返し出てくる以下のフレーズが、「ダンドーのバリュー投資」の特徴を一番よく表していると思います。

「コインの表なら勝ち、裏でも負けは小さい!」

とにかく低リスクを追求するのがダンドー流であり、リスクが高い革新的な企業よりも成功者を模倣している企業を選んだり、裁定取引になるような低リスクなビジネスを探し、ここぞというところで大きく賭ける(負けても損は小さい)のがダンドー流のバリュー株投資です。

また、詳しくは紹介しませんが本書の後半では株の売り時についても書かれています。市場での企業の評価が変わるのは一瞬ですが(株価が下がるのは一瞬)、企業が変化するには時間がかかります。

なので、バリュー株投資家は短期的に含み損が出ても辛抱強く耐える必要があります。しかし3年たっても含み損の場合、それはその企業の本質価値を見誤っていた可能性が高いので損することをためらわずに撤退する必要があります。

当記事ではダンドー流の9つのフレームワークを中心に紹介しましたが、本書内には具体的な事例がたくさん出てきます。

また、最後の章「ルジュールの集中力 勇敢な戦士から学ぶ投資レッスン」も個人的には大きな気づきがあってよかったです。

バリュー株投資家にとって学べることが多い本だと思うので、よかったら手にとって読んでみてください。

ほとんどの投資家は、高い利益率を得るためには大きなリスクをとらなければならないと言われてきたのではないだろうか。本書で紹介する「ダンドー手法」とは、バフェットたちが成功した手法からさらに一歩進めて、リスクを最小化しながら、リターンを最大化するという革新的な方法である。