為替の決定要因についてまとめてみた

為替の決定要因についてはいろいろな理論がありますが、今回は各理論の簡単な説明と、参考になるデータを紹介します。

目次

①購買力平価説
②国際収支説
③金利平価説
④貨幣数量説

①購買力平価説

購買力平価説とは、為替レートは2国間の通貨の購買力の比率によって決定されるという説です。

国が違っても同じ製品の価格は一つであるという「一物一価の法則」が前提にあります。各国の物やサービスの価格を比較して、為替レートが決定されるという理論です。

インフレ国とデフレ国

購買力平価説は、物価と併せて考えることで購買力平価説は意味を持ちます。

 インフレ国とデフレ国の通貨
  • インフレ国では物の値段がだんだんと上がる→通貨の価値が下落する
  • デフレ国では物の値段がだんだんと下がる→通貨の価値が上昇する


※参考サイト:日米のインフレ率の推移(世界経済のネタ帳)

参考データその1:国際通貨研究所が公表している購買力平価レート

図表1は、消費者物価指数等を基に算出している購買力平価為替レートと、実際の為替レートの比較のグラフです。このデータによれば、2014年8月27日の実勢レートは1ドル=103.91円ですが、消費者物価から産出される購買力平価レートは1ドル=128.95ドルとなります。

図表1:ドル円購買力平価と実勢相場
PPP_20140928
出所:国際通貨研究所

参考データその2:ビッグマック指数

ビッグマックのように世界中で売られている商品の価格を国別に比較することで、理論的な為替レートを考える指数です。例えば2014年7月時点で、日本とアメリカのビッグマックの価格はそれぞれ370円、4.8ドルです。ビッグマックの価値は世界共通であるとすると、370円/4.8ドル=77円となり、1ドル=77円

世界のビッグマックの価格一覧(世界経済のネタ帳)

②国際収支説

国際収支説とは、為替レートは需給で決まり、需給は国際賃借の状況(つまり経常収支と資本収支)によって決まるという説です。

経常収支が黒字の時、外国では外貨を売って円を買い、日本に円を支払う必要があります。また、日本では受け取った外貨を売って円を買う動きが増加します。つまり、国内外で円に対する需要が高まるので、円高になるという流れです。

 経常収支と通貨の関係性
  • 日本の経常収支の黒字→円高ドル安
  • 日本の経常収支の赤字→円安ドル高

参考データ:各国の経常収支のまとめ

日本の経常収支の推移(世界経済のネタ帳)
アメリカの経常収支の推移(世界経済のネタ帳)
世界の経常収支ランキング(世界経済のネタ帳)

③金利平価説

金利平価説とは、自国通貨と外国通貨の名目金利の差によって為替レートが決定されるという説です。

結論から言うと、名目金利の高い国の通貨は、将来的に価値が下がっていく、というものです(つまり、アメリカの名目金利が日本よりも高かった場合、将来的にドルの価値が下がって円高ドル安になる、ということ)。

例えば、現在は1ドル=100円で、アメリカの名目金利が5%、日本の名目金利が1%であるとします(ここでは単純化して考えます。厳密にはこの金利平価説は成り立ちません。)。

日本の債権を100円持っていた人の資産は1年後に100円×1.01%=101円になります。1年後のドル円レートをF(1)とした場合、アメリカの債権を1ドル持っていた人の資産は1年後に円換算で、1ドル×1.05%×F(1)になります。

投資家から見て、両国の1年後の債権の価値に差がある場合、裁定取引を行います(リターンの高い国に投資を行い、リターンの低い国の資産を売却します)。その裁定取引の結果、どちらの国に投資した場合でも収益率が同じとなるはずです。

つまり、日本に投資をした場合の101円と、アメリカに投資をした場合の1ドル×1.05%×F(1)円の価値が等しくなります。101円=1ドル×1.05%×F(1)の方程式を解いてやると、1年後には1ドル=96.19円となり、円高ドル安が進むことになります。

 金利と通過の関係性
金利平価説によれば、高金利国の通貨は下落し、低金利国の通貨は上昇する。
中央銀行の利上げが通貨高を招く理由

一般的に、中央銀行の金利引き上げはその国の通貨の上昇を招きますが、これは金利平価説と矛盾するものではありません。

金利平価説を公式に当てはめると、以下のようになります。
F(0)×円金利=米金利×F(1)

F(1)=F(0)×円金利/米金利となるので、米金利の方が円金利よりも高い場合、F(1)はF(0)よりも小さくなります(つまり円高になる)。これが金利平価説です。

中央銀行の利上げの場合、考え方が異なります。将来の為替レートであるF(1)は、購買力平価等のファンダメンタルズで一定水準に決まっています。ですので、F(0)=F(1)×米金利/円金利と式を変更した場合、F(1)=一定なので、F(0)の値が小さくなります(つまり円高になる)。

長期的な為替水準は金利平価説によって導かれるF(1)に収れんしていきます。中央銀行の利上げニュースがあった場合、将来の為替レートではなく現在の為替レートに影響し、瞬間的に高くなった為替水準から長期的にF(1)へと近づいていくことになるわけです。

各国の政策金利の推移データ

主要国の政策金利の推移と今後の発表スケジュール(外為どっとコム)
政策金利の推移と為替レートの比較(ZAi FX!)

④貨幣数量説

貨幣数量説とは、社会に流通している貨幣の総量と、その流通速度が物価水準を決定している(貨幣数量と物価水準は比例する)という説です。

流通する貨幣の量が増えると貨幣の価値が下がり、物価が上昇するという仮説で、直感的にも理解しやすいです。

貨幣数量説は以下の簡単な1つの式で表されます。

M・V=P・Y

M:世の中に出回っている貨幣の総量(マネーストック、又はマネーサプライ)
V:貨幣の流通速度(一定期間の間に貨幣が何回取引に使われるか。貨幣の回転率)
P:物価水準
Y:取引量(取引された物とサービスの総量)

ここでV=一定と仮定すると、物価はマネーストック(金融機関と中央銀行を除いた主体が保有する通貨の合計=現金通貨+預金通貨+譲渡性定期預金)を増やすことで上昇することになります。マネーストックはマネタリーベース(=流通現金+日銀当座預金)を金融機関が信用創造によって市中に供給することで増加します。

日銀が量的緩和によって通貨の供給量を増やすだけでは日銀当座預金が増えるだけで、マネーストックの増加、つまり物価上昇にはつながらないです。量的緩和によって市中銀行が融資を増やすことで、市中に出回る貨幣の総量であるマネーストックが増加し、物価が上昇します。そして物価が上昇すると、購買力平価説によりその国の通貨は下落します。

参考データ:ソロスチャート

ソロスチャートとは、ジョージソロスが考えたマネタリーベースと為替レートを比較したグラフです。日本のマネタリーベースは日銀が毎月第2営業日に公表していますが、日米のマネタリーベース比とドル円為替レートを比較することで、今後の為替水準を予想しようというものです。

2011年4月以降のソロスチャート(Let’s GOLD)

実際は、マネタリーベースを増やしただけでは為替には影響せず、信用創造により市中に出回るお金が増えて初めて物価が上昇し、通貨安を招きます。マネタリーベースから超過準備(民間銀行が法定準備金を上回って日銀当座預金に残しているお金)を差し引いた修正マネタリーベースを用いるか、マネーストックを用いた方がソロスチャートの相関は高くなるんですが、残念ながら定期的に修正ソロスチャートを更新しているサイトを見つけることはできませんでした。

アメリカの金融政策を決定するFOMCの政策動向は下記で定期的にチェックできます。
米国FOMCの政策動向(外為どっとコム)

日銀の金融政策決定会合の内容はこちらで確認できます。
金融政策決定会合の運営(日本銀行)

為替の決定要因についてまとめ

最後に、為替の決定要因について簡単にまとめます。

 為替の決定要因についてまとめ
  • インフレ国の通貨は安くなり、デフレ国の通貨は高くなる
  • 経常収支の赤字は通貨安を招き、経常収支の黒字は通貨高を招く
  • 高金利国の通貨は安くなり、低金利国の通貨は高くなる
    (但し、中央銀行の政策金利の引き上げは一時的な通貨高を招く)
  • マネーストックが増えると通貨は安なり、金融引き締めは通貨高を招く
    (金融緩和は物価の上昇を招き、通貨が安くなる)

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